薬剤情報
後発品
薬効分類抗悪性腫瘍薬 > 三酸化ヒ素製剤
一般名三酸化二ヒ素注射液
薬価23865
メーカー日本新薬
最終更新2023年11月改訂(第2版)

用法・用量

通常、三酸化二ヒ素として、0.15mg/kgを5%ブドウ糖液あるいは生理食塩液に混合して100〜250mLとし、1〜2時間かけて投与する。

(1). 寛解導入療法:骨髄寛解が得られるまで1日1回静脈内投与する。合計の投与回数は60回を超えないこと。

(2). 寛解後療法:寛解が得られた場合には、寛解導入終了後3〜6週間後に開始する。5週間の間に1日1回、計25回静脈内投与する。

用法・用量に関連する注意

(用法及び用量に関連する注意)

7.1. 本剤投与時に、急性血管収縮・急性血管拡張に伴う症状(低血圧、めまい、頭部ふらふら感、潮紅、頭痛等)が認められた場合には4時間まで投与時間を延長することができる。

7.2. 寛解後療法の用法・用量を複数回繰り返し(本剤の25回を超える投与)実施した場合の有効性・安全性は確立していない(投与経験が極めて少ない)。

効能・効果

再発又は難治性の急性前骨髄球性白血病。

効能・効果に関連する注意

(効能又は効果に関連する注意)

染色体検査[t(15;17)転座]又は遺伝子検査(PML−RARA遺伝子)により急性前骨髄球性白血病と診断された患者に使用すること。本剤により完全寛解を得た後に再発した急性前骨髄球性白血病に対して、本剤の有効性・安全性は確立していない。

副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

重大な副作用

11.1. 重大な副作用

11.1.1. 心電図QT延長(49.9%):本剤はQT延長、完全房室ブロック等の不整脈を引き起こすことがあり、QT延長は致命的となりうるtorsade de pointes(TdP)タイプの心室性不整脈を引き起こすことがある。QT間隔が500msecを超えた患者は、随伴する危険因子がある場合には直ちにこれを是正する処置を講じ、本剤による治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を継続すること。失神や頻脈等の不整脈が認められた場合には、血清電解質を検査し、QTc間隔が460msec以下になり電解質異常が是正され、失神や頻脈等の不整脈が認められなくなるまで休薬し、症状によっては投与中止も考慮に入れること。本剤によるQT延長等の不整脈が認められた場合は、治療終了後も症状が認められなくなるまで、心電図モニターや12誘導心電図による検査を行い、適切な処置を行うこと。

米国においてアムホテリシンBを併用していた1例で、本剤による寛解導入療法中にTdPが発症したとの報告がある〔1.2、8.2、10.2参照〕。

11.1.2. APL分化症候群(7.3%):本剤はAPL分化症候群(APL differentiation syndrome)と呼ばれるレチノイン酸症候群と類似した副作用が発現し、致死的転帰をたどることがあるので、十分な経過観察を行うこと(このような症状があらわれた場合には休薬し、副腎皮質ホルモン剤のパルス療法等の適切な処置を行うこと)〔1.3参照〕。

11.1.3. 白血球増加症(11.6%):本剤により高度白血球増加症が引き起こされることがあるので、観察を十分に行い、末梢白血球数が30000/mm3を超えた場合には、休薬し、経過観察や白血球数に応じた化学療法剤の使用等の適切な処置を行うこと(なお、化学療法剤の使用にあたっては、危険性を伴うので、十分注意すること(本剤と化学療法剤の併用についての有効性と安全性は確立されていない))〔8.3参照〕。

11.1.4. 汎血球減少(1.8%)、無顆粒球症(頻度不明)、白血球減少(21.8%)、血小板減少(7.7%)。

11.1.5. ウェルニッケ脳症(頻度不明):意識障害、運動失調、眼球運動障害等の症状が認められた場合には、ビタミンB1の測定、MRIによる画像診断等を行うとともに、ビタミンB1の投与、本剤の中止等の適切な処置を行うこと。

その他の副作用

11.2. その他の副作用

1). 循環器:(5%未満)心電図QT補正間隔延長、頻脈、徐脈、不整脈、動悸、心嚢液貯留、洞性頻脈、うっ血性心不全、血圧低下、潮紅、(頻度不明)心電図異常、心筋症、心膜炎、低血圧、起立性低血圧、機能性心雑音。

2). 呼吸器:(5%未満)呼吸困難、労作性呼吸困難、咳嗽、肺胞出血、胸水、(頻度不明)無気肺、呼吸困難増悪、低酸素症、胸膜痛、頻呼吸、喘鳴音、咽喉頭疼痛、捻髪音。

3). 消化器:(5%未満)悪心、胃不快感、嘔吐、腹部膨満、腹痛、上腹部痛、下痢、便秘、食欲不振、消化不良、腸運動過剰、口唇乾燥、歯痛、胃腸不快感、食欲減退、口内乾燥、(頻度不明)歯肉出血、口唇潰瘍、鼓腸、便失禁、排便回数増加、軟便、血性下痢。

4). 肝臓:(5%以上)肝機能異常(29.7%)、ALT増加(30.3%)、AST増加(24.0%)、ALP増加、LDH増加(10.8%)、γ−GTP増加、(5%未満)血中ビリルビン増加。

5). 腎臓:(5%未満)腎機能障害、血中クレアチニン増加、BUN減少、BUN増加、乏尿、(頻度不明)着色尿、尿中蛋白陽性。

6). 電解質異常:(5%以上)低カリウム血症、(5%未満)低カルシウム血症、血中マグネシウム減少、高マグネシウム血症、高カリウム血症、高ナトリウム血症。

7). 血液:(5%以上)好中球減少、(5%未満)貧血、発熱性好中球減少症、脾腫、(頻度不明)点状出血、斑状出血。

8). 血液凝固系:(5%未満)APTT延長、APTT短縮、血中フィブリノゲン減少、FDP増加。

9). 血管障害:(5%未満)血管炎、(頻度不明)蒼白。

10). 皮膚:(5%以上)発疹、(5%未満)紅斑、紅色汗疹、紅斑性皮疹、顔面浮腫、皮膚乾燥、皮膚炎、皮膚そう痒症、そう痒性皮疹、多汗症、(頻度不明)神経皮膚炎、剥脱性皮膚炎、局所性表皮剥脱、眼窩周囲浮腫、鱗屑性皮疹、皮膚色素過剰、皮膚病変。

11). 代謝・栄養障害:(5%以上)高血糖、(5%未満)低蛋白血症、低アルブミン血症、(頻度不明)低血糖症、ケトアシドーシス。

12). 全身状態:(5%未満)発熱、浮腫、体重増加、胸部不快感、悪寒、倦怠感、胸痛、(頻度不明)疲労、疼痛、腫脹、体重減少。

13). 精神神経系:(5%未満)感覚減退、頭痛、振戦、うつ病、不快気分、不眠症、味覚異常、反射減弱、錯感覚、末梢性ニューロパシー、痙攣、(頻度不明)浮動性めまい、不安、抑うつ気分、トンネル状視野、聴覚障害。

14). 感染症:(5%未満)咽喉頭炎、帯状疱疹、単純ヘルペス、上気道感染、(頻度不明)副鼻腔炎。

15). 筋・骨格:(5%未満)背部痛、四肢痛、関節痛、骨痛、筋痛、筋骨格硬直、筋脱力、(頻度不明)局所腫脹、関節滲出液、顎痛、重感。

16). 眼:(5%未満)結膜出血、(頻度不明)眼瞼炎、眼刺激、眼瞼下垂、眼痛、霧視。

17). その他:(5%以上)CRP増加(11.0%)、(5%未満)末梢性浮腫、血中リン増加、注入部位紅斑、注入部位疼痛、注入部位腫脹、(頻度不明)骨髄生検異常、中耳滲出液、水疱、裂傷。

発現頻度は使用成績調査を含む。

警告

1.1. 本剤による治療は危険性を伴うため、原則として、投与期間中は患者を入院環境で医師の管理下に置くこと。また、緊急医療体制の整備された医療機関において白血病(特に急性前骨髄球性白血病(APL))の治療に十分な知識と経験を持つ医師のもとで治療を行うこと。

1.2. 本剤はQT延長、完全房室ブロック等の不整脈を起こすことがあり、QT延長は致命的となりうるtorsade de pointes(TdP)タイプの心室性不整脈を引き起こすことがあるので失神や頻脈等の不整脈が認められた場合には、休薬し、症状によっては投与中止も考慮に入れること。投与開始前には12誘導心電図を実施し、血清電解質(カリウム、カルシウム、マグネシウム)及びクレアチニンについて検査すること。電解質異常が認められている場合には是正し、QT延長を来す併用薬剤の投与を避けること。本剤投与中は12誘導心電図を最低週2回実施し、更に心電図モニター等による監視も考慮すること〔8.2、11.1.1参照〕。

1.3. 本剤はAPL分化症候群(APL differentiation syndrome)と呼ばれるレチノイン酸症候群と類似した副作用が発現し、致死的転帰をたどることがあるので、十分な経過観察を行うこと(このような症状があらわれた場合には休薬し、副腎皮質ホルモン剤のパルス療法等の適切な処置を行うこと)〔11.1.2参照〕。

1.4. 本剤使用にあたっては、「2.禁忌」、「8.重要な基本的注意」及び「9.特定の背景を有する患者に関する注意」に十分留意し、慎重に患者を選択すること。

禁忌

2.1. ヒ素に対して過敏症の既往歴のある患者。

2.2. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性〔9.5妊婦の項参照〕。

重要な基本的注意

8.1. 本剤の投与に際しては、頻回に患者の状態を観察し、生化学的検査(電解質等)、血液学的検査及び血液凝固能検査は寛解導入療法では最低週2回、寛解後療法では最低週1回実施すること。臨床状態が不安定な患者には更に頻回生化学的検査(電解質等)、血液学的検査及び血液凝固能検査を行うこと。

8.2. 本剤はQT延長、完全房室ブロック等の不整脈を引き起こすことがあり、QT延長は致命的となりうるtorsade de pointes(TdP)タイプの心室性不整脈を引き起こすことがある。TdPの危険因子は、QT延長の程度、QT延長を起こす薬剤併用、TdPの既往、潜在するQT延長、うっ血性心不全、虚血性心疾患、カリウム排泄型利尿薬投与、低カリウム血症や低マグネシウム血症等である。したがって、本剤による治療に際しては次の点に留意し、心電図検査及び血清電解質検査等を行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。なお、心電図検査での適切な読影や異常時の処置法については循環器専門医の助言を得ることが望ましい〔1.2、9.1.1、11.1.1参照〕。

・ 治療開始前:12誘導心電図を実施し、血清電解質(カリウム、カルシウム、マグネシウム)及びクレアチニンについて検査すること。電解質異常が既に認められている場合には是正し、QT延長をきたす薬剤の併用投与を避けること。それでも500msec以上のQTc間隔が認められた場合は、本剤による治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を開始すること。

・ 治療中:12誘導心電図を最低週2回実施し、更に心電図モニター等による監視も考慮した上で、カリウム濃度を4mEq/L以上、マグネシウム濃度を1.8mg/dL以上に維持すること。

8.3. 急性前骨髄球性白血病に併発する播種性血管内凝固症候群(DIC)では、線溶活性亢進を伴う致命的出血傾向(脳出血、肺出血等)が報告されている(本剤投与中にこのような症状があらわれた場合には、血小板輸血等の適切な処置を行うこと)。また、急性前骨髄球性白血病に併発する播種性血管内凝固症候群(DIC)では、本剤投与中に急激な白血球増加・急激な芽球増加・急激な前骨髄球増加に伴って、DIC悪化が報告されており、このような症状があらわれた場合には、適切な処置を行うこと〔11.1.3参照〕。

8.4. 本剤は肝機能異常を起こすことがあるので、投与前、投与中は肝機能検査を定期的に行い、異常が認められた場合には休薬し、適切な処置を行うこと。

8.5. 本剤は血糖値上昇を起こすことがあるので、投与前、投与中は血糖値検査を定期的に行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。

8.6. 神経障害は無機ヒ素の長期曝露による毒性として知られている。本剤は錯感覚、感覚減退等の神経障害を起こすことがあるので、観察を十分に行い、症状が重度な場合には、休薬、症状が重度な場合には、投与中止等の適切な処置を行うこと。

(特定の背景を有する患者に関する注意)

(合併症・既往歴等のある患者)

9.1.1. QT延長の既往歴のある患者、低カリウム血症又は低マグネシウム血症、心疾患(不整脈、虚血性心疾患等)のある患者:QT延長の危険性が増大する〔8.2参照〕。

9.1.2. 心疾患(心筋梗塞、心筋障害等)又はその既往歴のある患者:症状が悪化するおそれがある。

(腎機能障害患者)

腎機能障害患者:排泄機能の低下により、本剤の体内濃度が上昇する可能性がある。

(肝機能障害患者)

肝機能障害患者:代謝機能の低下により、本剤の体内濃度が上昇する可能性がある。

(生殖能を有する者)

9.4.1. 女性患者:女性患者については使用上の注意を厳守し、次の点に留意すること〔9.5妊婦の項、15.2.1参照〕。

(1). 投与開始にあたっては、妊娠していないことを確認すること。

(2). 妊娠する可能性のある女性に対しては投与しないことを原則とするが、妊娠する可能性のある女性に対してやむを得ず投与する場合には、妊娠の維持、胎児の発育等に障害を与える可能性があることを十分に説明すること(また、妊娠する可能性のある女性に対しては本剤投与中及び最終投与後7ヵ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること)。

(3). 投与中に妊娠が確認された場合又は疑われた場合には直ちに投与を中止すること。

9.4.2. 男性:男性には、本剤投与中及び最終投与後4ヵ月間においてバリア法(コンドーム)を用いて避妊する必要性について説明すること〔15.2.1参照〕。

相互作用

10.2. 併用注意:

1). QT延長を起こすことが知られている薬剤(ドロペリドール、抗精神病薬(クロルプロマジン、ハロペリドール、ピモジド、チオリダジン等)、抗うつ薬(イミプラミン等)、抗不整脈薬(アミオダロン、ベプリジル、ジソピラミド、プロカインアミド、キニジン、ソタロール等)、フロセミド、プロブコール、ファモチジン、プロピベリン、消化管運動亢進薬(シサプリド、ドンペリドン等)、抗菌薬(クラリスロマイシン、エリスロマイシン、スパルフロキサシン等)、抗真菌薬(フルコナゾール等)、ペンタミジン等)[QT延長、心室性不整脈<TdPを含む>を起こすおそれがある(本剤及びこれらの薬剤はいずれもQT延長あるいは心室性不整脈(TdPを含む)を起こすことがある)]。

2). 利尿薬(トリクロルメチアジド等)、アムホテリシンB〔11.1.1参照〕[電解質異常を引き起こす(本剤及びこれらの薬剤はいずれもQT延長の原因となる電解質異常を起こすことがある)]。

高齢者

患者の状況を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能が低下していることが多く、副作用があらわれやすい)。

妊婦・授乳婦

(妊婦)

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと(動物実験で催奇形作用を示唆する所見が認められており、胎児等への影響が疑われ、また、無機ヒ素は胎盤通過性を有し、胚吸収増加、神経管異常、無眼球症、小眼球症が認められている)〔2.2、9.4.1参照〕。

(授乳婦)

本剤投与中及び最終投与後一定期間は授乳を避けさせること(ヒ素は、乳汁中に移行するため授乳中の乳児に対する重篤な副作用があらわれるおそれがある)。

小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

過量投与

13.1. 症状

過量投与時の症状は、重篤な急性ヒ素中毒(例:痙攣、筋脱力感、錯乱状態等)。

13.2. 処置

過量投与時、重篤な急性ヒ素中毒を示唆する症状が発現した場合は、本剤の投与を速やかに中止し、キレート治療等を検討すること。

参考:通常のキレート療法はジメルカプロール1回2.5mg/kgを最初の2日間は4時間ごとに1日6回、3日目には1日4回、以降10日間あるいは回復するまで毎日2回筋肉内注射する。その後、ペニシラミン250mgを経口で最高1日4回(≦1000mg/day)まで投与してもよい。

適用上の注意、取扱い上の注意

(適用上の注意)

14.1. 薬剤投与時の注意

14.1.1. 取扱い時にはゴム手袋、防護メガネ等の着用が望ましい。

14.1.2. 眼や皮膚に付着した場合は直ちに多量の水で十分に洗浄し、医師の診断を受けるなど、適切な処置を行うこと。

14.1.3. 投与にあたっては5%ブドウ糖液あるいは生理食塩液に混合して使用し、他の薬剤<5%ブドウ糖液・生理食塩液以外>又は輸液<5%ブドウ糖液・生理食塩液以外>と混合しないこと。

14.1.4. 本剤は10mLの使い切りアンプルである。残った溶液をその後の投与に使用しないこと。

14.1.5. 投与に際して本剤が血管外に漏出した場合は、直ちに投与を中止し可能な限り局所から残薬を回収すること。

14.1.6. 使用後の残液及び薬液の触れた器具等は適用法令等に従って廃棄すること。

その他の注意

15.1. 臨床使用に基づく情報

15.1.1. 疫学的にヒトに対するヒ素の発がん作用が知られているが、ヒ素の発がんメカニズムの詳細については不明である。

15.1.2. 生殖発生毒性に関しては、ヒ素は胎盤を通過することが知られており、母体に影響を及ぼす投与量において、奇形を含む発育毒性を誘発すると考えられている。

15.2. 非臨床試験に基づく情報

15.2.1. 三価のヒ素は染色体異常に起因する遺伝毒性を誘発する〔9.4.1、9.4.2参照〕。

15.2.2. 動物(イヌ)で雄性生殖能に及ぼす影響が認められている。

貯法

(保管上の注意)

室温保存。

トリセノックス注10mg
後発品はありません
トリセノックス注10mg
トリセノックス注10mg

トリセノックス注10mg

抗悪性腫瘍薬 > 三酸化ヒ素製剤
2023年11月改訂(第2版)
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後発品
薬効分類抗悪性腫瘍薬 > 三酸化ヒ素製剤
一般名三酸化二ヒ素注射液
薬価23865
メーカー日本新薬
最終更新2023年11月改訂(第2版)

用法・用量

通常、三酸化二ヒ素として、0.15mg/kgを5%ブドウ糖液あるいは生理食塩液に混合して100〜250mLとし、1〜2時間かけて投与する。

(1). 寛解導入療法:骨髄寛解が得られるまで1日1回静脈内投与する。合計の投与回数は60回を超えないこと。

(2). 寛解後療法:寛解が得られた場合には、寛解導入終了後3〜6週間後に開始する。5週間の間に1日1回、計25回静脈内投与する。

用法・用量に関連する注意

(用法及び用量に関連する注意)

7.1. 本剤投与時に、急性血管収縮・急性血管拡張に伴う症状(低血圧、めまい、頭部ふらふら感、潮紅、頭痛等)が認められた場合には4時間まで投与時間を延長することができる。

7.2. 寛解後療法の用法・用量を複数回繰り返し(本剤の25回を超える投与)実施した場合の有効性・安全性は確立していない(投与経験が極めて少ない)。

効能・効果

再発又は難治性の急性前骨髄球性白血病。

効能・効果に関連する注意

(効能又は効果に関連する注意)

染色体検査[t(15;17)転座]又は遺伝子検査(PML−RARA遺伝子)により急性前骨髄球性白血病と診断された患者に使用すること。本剤により完全寛解を得た後に再発した急性前骨髄球性白血病に対して、本剤の有効性・安全性は確立していない。

副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

重大な副作用

11.1. 重大な副作用

11.1.1. 心電図QT延長(49.9%):本剤はQT延長、完全房室ブロック等の不整脈を引き起こすことがあり、QT延長は致命的となりうるtorsade de pointes(TdP)タイプの心室性不整脈を引き起こすことがある。QT間隔が500msecを超えた患者は、随伴する危険因子がある場合には直ちにこれを是正する処置を講じ、本剤による治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を継続すること。失神や頻脈等の不整脈が認められた場合には、血清電解質を検査し、QTc間隔が460msec以下になり電解質異常が是正され、失神や頻脈等の不整脈が認められなくなるまで休薬し、症状によっては投与中止も考慮に入れること。本剤によるQT延長等の不整脈が認められた場合は、治療終了後も症状が認められなくなるまで、心電図モニターや12誘導心電図による検査を行い、適切な処置を行うこと。

米国においてアムホテリシンBを併用していた1例で、本剤による寛解導入療法中にTdPが発症したとの報告がある〔1.2、8.2、10.2参照〕。

11.1.2. APL分化症候群(7.3%):本剤はAPL分化症候群(APL differentiation syndrome)と呼ばれるレチノイン酸症候群と類似した副作用が発現し、致死的転帰をたどることがあるので、十分な経過観察を行うこと(このような症状があらわれた場合には休薬し、副腎皮質ホルモン剤のパルス療法等の適切な処置を行うこと)〔1.3参照〕。

11.1.3. 白血球増加症(11.6%):本剤により高度白血球増加症が引き起こされることがあるので、観察を十分に行い、末梢白血球数が30000/mm3を超えた場合には、休薬し、経過観察や白血球数に応じた化学療法剤の使用等の適切な処置を行うこと(なお、化学療法剤の使用にあたっては、危険性を伴うので、十分注意すること(本剤と化学療法剤の併用についての有効性と安全性は確立されていない))〔8.3参照〕。

11.1.4. 汎血球減少(1.8%)、無顆粒球症(頻度不明)、白血球減少(21.8%)、血小板減少(7.7%)。

11.1.5. ウェルニッケ脳症(頻度不明):意識障害、運動失調、眼球運動障害等の症状が認められた場合には、ビタミンB1の測定、MRIによる画像診断等を行うとともに、ビタミンB1の投与、本剤の中止等の適切な処置を行うこと。

その他の副作用

11.2. その他の副作用

1). 循環器:(5%未満)心電図QT補正間隔延長、頻脈、徐脈、不整脈、動悸、心嚢液貯留、洞性頻脈、うっ血性心不全、血圧低下、潮紅、(頻度不明)心電図異常、心筋症、心膜炎、低血圧、起立性低血圧、機能性心雑音。

2). 呼吸器:(5%未満)呼吸困難、労作性呼吸困難、咳嗽、肺胞出血、胸水、(頻度不明)無気肺、呼吸困難増悪、低酸素症、胸膜痛、頻呼吸、喘鳴音、咽喉頭疼痛、捻髪音。

3). 消化器:(5%未満)悪心、胃不快感、嘔吐、腹部膨満、腹痛、上腹部痛、下痢、便秘、食欲不振、消化不良、腸運動過剰、口唇乾燥、歯痛、胃腸不快感、食欲減退、口内乾燥、(頻度不明)歯肉出血、口唇潰瘍、鼓腸、便失禁、排便回数増加、軟便、血性下痢。

4). 肝臓:(5%以上)肝機能異常(29.7%)、ALT増加(30.3%)、AST増加(24.0%)、ALP増加、LDH増加(10.8%)、γ−GTP増加、(5%未満)血中ビリルビン増加。

5). 腎臓:(5%未満)腎機能障害、血中クレアチニン増加、BUN減少、BUN増加、乏尿、(頻度不明)着色尿、尿中蛋白陽性。

6). 電解質異常:(5%以上)低カリウム血症、(5%未満)低カルシウム血症、血中マグネシウム減少、高マグネシウム血症、高カリウム血症、高ナトリウム血症。

7). 血液:(5%以上)好中球減少、(5%未満)貧血、発熱性好中球減少症、脾腫、(頻度不明)点状出血、斑状出血。

8). 血液凝固系:(5%未満)APTT延長、APTT短縮、血中フィブリノゲン減少、FDP増加。

9). 血管障害:(5%未満)血管炎、(頻度不明)蒼白。

10). 皮膚:(5%以上)発疹、(5%未満)紅斑、紅色汗疹、紅斑性皮疹、顔面浮腫、皮膚乾燥、皮膚炎、皮膚そう痒症、そう痒性皮疹、多汗症、(頻度不明)神経皮膚炎、剥脱性皮膚炎、局所性表皮剥脱、眼窩周囲浮腫、鱗屑性皮疹、皮膚色素過剰、皮膚病変。

11). 代謝・栄養障害:(5%以上)高血糖、(5%未満)低蛋白血症、低アルブミン血症、(頻度不明)低血糖症、ケトアシドーシス。

12). 全身状態:(5%未満)発熱、浮腫、体重増加、胸部不快感、悪寒、倦怠感、胸痛、(頻度不明)疲労、疼痛、腫脹、体重減少。

13). 精神神経系:(5%未満)感覚減退、頭痛、振戦、うつ病、不快気分、不眠症、味覚異常、反射減弱、錯感覚、末梢性ニューロパシー、痙攣、(頻度不明)浮動性めまい、不安、抑うつ気分、トンネル状視野、聴覚障害。

14). 感染症:(5%未満)咽喉頭炎、帯状疱疹、単純ヘルペス、上気道感染、(頻度不明)副鼻腔炎。

15). 筋・骨格:(5%未満)背部痛、四肢痛、関節痛、骨痛、筋痛、筋骨格硬直、筋脱力、(頻度不明)局所腫脹、関節滲出液、顎痛、重感。

16). 眼:(5%未満)結膜出血、(頻度不明)眼瞼炎、眼刺激、眼瞼下垂、眼痛、霧視。

17). その他:(5%以上)CRP増加(11.0%)、(5%未満)末梢性浮腫、血中リン増加、注入部位紅斑、注入部位疼痛、注入部位腫脹、(頻度不明)骨髄生検異常、中耳滲出液、水疱、裂傷。

発現頻度は使用成績調査を含む。

警告

1.1. 本剤による治療は危険性を伴うため、原則として、投与期間中は患者を入院環境で医師の管理下に置くこと。また、緊急医療体制の整備された医療機関において白血病(特に急性前骨髄球性白血病(APL))の治療に十分な知識と経験を持つ医師のもとで治療を行うこと。

1.2. 本剤はQT延長、完全房室ブロック等の不整脈を起こすことがあり、QT延長は致命的となりうるtorsade de pointes(TdP)タイプの心室性不整脈を引き起こすことがあるので失神や頻脈等の不整脈が認められた場合には、休薬し、症状によっては投与中止も考慮に入れること。投与開始前には12誘導心電図を実施し、血清電解質(カリウム、カルシウム、マグネシウム)及びクレアチニンについて検査すること。電解質異常が認められている場合には是正し、QT延長を来す併用薬剤の投与を避けること。本剤投与中は12誘導心電図を最低週2回実施し、更に心電図モニター等による監視も考慮すること〔8.2、11.1.1参照〕。

1.3. 本剤はAPL分化症候群(APL differentiation syndrome)と呼ばれるレチノイン酸症候群と類似した副作用が発現し、致死的転帰をたどることがあるので、十分な経過観察を行うこと(このような症状があらわれた場合には休薬し、副腎皮質ホルモン剤のパルス療法等の適切な処置を行うこと)〔11.1.2参照〕。

1.4. 本剤使用にあたっては、「2.禁忌」、「8.重要な基本的注意」及び「9.特定の背景を有する患者に関する注意」に十分留意し、慎重に患者を選択すること。

禁忌

2.1. ヒ素に対して過敏症の既往歴のある患者。

2.2. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性〔9.5妊婦の項参照〕。

重要な基本的注意

8.1. 本剤の投与に際しては、頻回に患者の状態を観察し、生化学的検査(電解質等)、血液学的検査及び血液凝固能検査は寛解導入療法では最低週2回、寛解後療法では最低週1回実施すること。臨床状態が不安定な患者には更に頻回生化学的検査(電解質等)、血液学的検査及び血液凝固能検査を行うこと。

8.2. 本剤はQT延長、完全房室ブロック等の不整脈を引き起こすことがあり、QT延長は致命的となりうるtorsade de pointes(TdP)タイプの心室性不整脈を引き起こすことがある。TdPの危険因子は、QT延長の程度、QT延長を起こす薬剤併用、TdPの既往、潜在するQT延長、うっ血性心不全、虚血性心疾患、カリウム排泄型利尿薬投与、低カリウム血症や低マグネシウム血症等である。したがって、本剤による治療に際しては次の点に留意し、心電図検査及び血清電解質検査等を行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。なお、心電図検査での適切な読影や異常時の処置法については循環器専門医の助言を得ることが望ましい〔1.2、9.1.1、11.1.1参照〕。

・ 治療開始前:12誘導心電図を実施し、血清電解質(カリウム、カルシウム、マグネシウム)及びクレアチニンについて検査すること。電解質異常が既に認められている場合には是正し、QT延長をきたす薬剤の併用投与を避けること。それでも500msec以上のQTc間隔が認められた場合は、本剤による治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を開始すること。

・ 治療中:12誘導心電図を最低週2回実施し、更に心電図モニター等による監視も考慮した上で、カリウム濃度を4mEq/L以上、マグネシウム濃度を1.8mg/dL以上に維持すること。

8.3. 急性前骨髄球性白血病に併発する播種性血管内凝固症候群(DIC)では、線溶活性亢進を伴う致命的出血傾向(脳出血、肺出血等)が報告されている(本剤投与中にこのような症状があらわれた場合には、血小板輸血等の適切な処置を行うこと)。また、急性前骨髄球性白血病に併発する播種性血管内凝固症候群(DIC)では、本剤投与中に急激な白血球増加・急激な芽球増加・急激な前骨髄球増加に伴って、DIC悪化が報告されており、このような症状があらわれた場合には、適切な処置を行うこと〔11.1.3参照〕。

8.4. 本剤は肝機能異常を起こすことがあるので、投与前、投与中は肝機能検査を定期的に行い、異常が認められた場合には休薬し、適切な処置を行うこと。

8.5. 本剤は血糖値上昇を起こすことがあるので、投与前、投与中は血糖値検査を定期的に行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。

8.6. 神経障害は無機ヒ素の長期曝露による毒性として知られている。本剤は錯感覚、感覚減退等の神経障害を起こすことがあるので、観察を十分に行い、症状が重度な場合には、休薬、症状が重度な場合には、投与中止等の適切な処置を行うこと。

(特定の背景を有する患者に関する注意)

(合併症・既往歴等のある患者)

9.1.1. QT延長の既往歴のある患者、低カリウム血症又は低マグネシウム血症、心疾患(不整脈、虚血性心疾患等)のある患者:QT延長の危険性が増大する〔8.2参照〕。

9.1.2. 心疾患(心筋梗塞、心筋障害等)又はその既往歴のある患者:症状が悪化するおそれがある。

(腎機能障害患者)

腎機能障害患者:排泄機能の低下により、本剤の体内濃度が上昇する可能性がある。

(肝機能障害患者)

肝機能障害患者:代謝機能の低下により、本剤の体内濃度が上昇する可能性がある。

(生殖能を有する者)

9.4.1. 女性患者:女性患者については使用上の注意を厳守し、次の点に留意すること〔9.5妊婦の項、15.2.1参照〕。

(1). 投与開始にあたっては、妊娠していないことを確認すること。

(2). 妊娠する可能性のある女性に対しては投与しないことを原則とするが、妊娠する可能性のある女性に対してやむを得ず投与する場合には、妊娠の維持、胎児の発育等に障害を与える可能性があることを十分に説明すること(また、妊娠する可能性のある女性に対しては本剤投与中及び最終投与後7ヵ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること)。

(3). 投与中に妊娠が確認された場合又は疑われた場合には直ちに投与を中止すること。

9.4.2. 男性:男性には、本剤投与中及び最終投与後4ヵ月間においてバリア法(コンドーム)を用いて避妊する必要性について説明すること〔15.2.1参照〕。

相互作用

10.2. 併用注意:

1). QT延長を起こすことが知られている薬剤(ドロペリドール、抗精神病薬(クロルプロマジン、ハロペリドール、ピモジド、チオリダジン等)、抗うつ薬(イミプラミン等)、抗不整脈薬(アミオダロン、ベプリジル、ジソピラミド、プロカインアミド、キニジン、ソタロール等)、フロセミド、プロブコール、ファモチジン、プロピベリン、消化管運動亢進薬(シサプリド、ドンペリドン等)、抗菌薬(クラリスロマイシン、エリスロマイシン、スパルフロキサシン等)、抗真菌薬(フルコナゾール等)、ペンタミジン等)[QT延長、心室性不整脈<TdPを含む>を起こすおそれがある(本剤及びこれらの薬剤はいずれもQT延長あるいは心室性不整脈(TdPを含む)を起こすことがある)]。

2). 利尿薬(トリクロルメチアジド等)、アムホテリシンB〔11.1.1参照〕[電解質異常を引き起こす(本剤及びこれらの薬剤はいずれもQT延長の原因となる電解質異常を起こすことがある)]。

高齢者

患者の状況を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能が低下していることが多く、副作用があらわれやすい)。

妊婦・授乳婦

(妊婦)

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと(動物実験で催奇形作用を示唆する所見が認められており、胎児等への影響が疑われ、また、無機ヒ素は胎盤通過性を有し、胚吸収増加、神経管異常、無眼球症、小眼球症が認められている)〔2.2、9.4.1参照〕。

(授乳婦)

本剤投与中及び最終投与後一定期間は授乳を避けさせること(ヒ素は、乳汁中に移行するため授乳中の乳児に対する重篤な副作用があらわれるおそれがある)。

小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

過量投与

13.1. 症状

過量投与時の症状は、重篤な急性ヒ素中毒(例:痙攣、筋脱力感、錯乱状態等)。

13.2. 処置

過量投与時、重篤な急性ヒ素中毒を示唆する症状が発現した場合は、本剤の投与を速やかに中止し、キレート治療等を検討すること。

参考:通常のキレート療法はジメルカプロール1回2.5mg/kgを最初の2日間は4時間ごとに1日6回、3日目には1日4回、以降10日間あるいは回復するまで毎日2回筋肉内注射する。その後、ペニシラミン250mgを経口で最高1日4回(≦1000mg/day)まで投与してもよい。

適用上の注意、取扱い上の注意

(適用上の注意)

14.1. 薬剤投与時の注意

14.1.1. 取扱い時にはゴム手袋、防護メガネ等の着用が望ましい。

14.1.2. 眼や皮膚に付着した場合は直ちに多量の水で十分に洗浄し、医師の診断を受けるなど、適切な処置を行うこと。

14.1.3. 投与にあたっては5%ブドウ糖液あるいは生理食塩液に混合して使用し、他の薬剤<5%ブドウ糖液・生理食塩液以外>又は輸液<5%ブドウ糖液・生理食塩液以外>と混合しないこと。

14.1.4. 本剤は10mLの使い切りアンプルである。残った溶液をその後の投与に使用しないこと。

14.1.5. 投与に際して本剤が血管外に漏出した場合は、直ちに投与を中止し可能な限り局所から残薬を回収すること。

14.1.6. 使用後の残液及び薬液の触れた器具等は適用法令等に従って廃棄すること。

その他の注意

15.1. 臨床使用に基づく情報

15.1.1. 疫学的にヒトに対するヒ素の発がん作用が知られているが、ヒ素の発がんメカニズムの詳細については不明である。

15.1.2. 生殖発生毒性に関しては、ヒ素は胎盤を通過することが知られており、母体に影響を及ぼす投与量において、奇形を含む発育毒性を誘発すると考えられている。

15.2. 非臨床試験に基づく情報

15.2.1. 三価のヒ素は染色体異常に起因する遺伝毒性を誘発する〔9.4.1、9.4.2参照〕。

15.2.2. 動物(イヌ)で雄性生殖能に及ぼす影響が認められている。

貯法

(保管上の注意)

室温保存。

後発品はありません
薬剤情報

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