概要
計算
監修医師

診断基準

診断のカテゴリー

Definite    Aの1項目以上+Bの1項目以上を満たし、 Cを除外し、 Dを満たすもの

Probable  Aの1項目以上+Bの1項目以上を満たし、 Cを除外し、 Eの2項目以上を満たすもの

Possible   Aの1項目以上+Bの1項目以上を満たし、 Cを除外したもの

指定難病申請は「Definite」「Probable」が対象

A.症状

年齢に応じて好発する症状に差がみられる。   

 

1. 新生児・乳児期 (0~1歳未満)

胎児脳室拡大 (水頭症) 、 新生児脳出血・梗塞、 脳静脈洞血栓症、 電撃性紫斑病、 硝子体出血。 皮膚の出血斑、 血尿などがしばしばみられる。 

2. 小児期 (1歳以上18歳未満) ・成人 (18歳以上)

静脈血栓塞栓症 (深部静脈血栓症、 肺塞栓症、 脳静脈洞血栓症、 上腸間膜静脈血栓症など)、 動脈血栓症 (脳梗塞など)。 
小児期では、脳出血・梗塞で発症する割合が多い。 成人女性は、習慣流産を来す場合もある。
※長時間不動、 外傷、 手術侵襲、 感染症、 脱水、 妊娠・出産、 女性ホルモン剤服用などが発症の誘因となることがある。
※症状には、 CT、 MRI、 超音波等の画像検査にて確認された無症候性のものも含む。

B.検査所見 

1.血漿PC活性 成人基準値の下限値未満 

2.血漿PS活性 成人基準値の下限値未満 

3.血漿AT活性 成人基準値の下限値未満 

※いずれの活性も、 それぞれの測定法での基準値に準拠する。
※18歳未満の症例については、 年齢別下限値 (表1) を参照する。  
※複数回測定にて、 ビタミン K 拮抗薬服用、 肝機能障害、 妊娠、 女性ホルモン剤使用、 ネフローゼ症候群、 血栓症の発症急性期、 感染症などによる二次的活性低下を除外する。  
※ビタミン K 欠乏 (特に新生児・乳児) と消費性凝固障害による影響を考慮して判断するために各活性測定時に、 FVII 活性及び PIVKAII を同時に測定することが望ましい。
特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る。)の診断基準・重症度分類

C.鑑別診断 

PC、 PS、 AT 欠乏症以外の遺伝性血栓性素因に伴う血栓傾向および血小板の異常 (骨髄増殖性腫瘍など) 、 血管障害、 血流障害、 抗リン脂質抗体症候群、 悪性腫瘍など

新生児期~小児期では、更に以下の疾患を鑑別

<新生児期>  仮死、 RDS、 母体DM、 壊死性腸炎、 新生児抗リン脂質抗体症候群など
<乳児期・小児期>  川崎病、 心不全、 DM、 鎌状貧血、 サラセミアなど

D.遺伝学的検査 

AT 遺伝子 (SERPINC1) 、 PC 遺伝子 (PROC) 、 PS 遺伝子 (PROS1) のいずれかに病因となる変異が同定されること。   

E.遺伝性を示唆する所見 

  1. 若年性 (40歳以下) 発症 
  2. 繰り返す再発 (特に適切な抗凝固療法や補充療法中の再発)  
  3. まれな部位 (脳静脈洞、 上腸間膜静脈など) での血栓症発症 
  4. 発端者と同様の症状を示す患者が家系内に1名以上存在

重症度分類 🔢計算はこちら

機能的評価:Barthel Index²⁾ 85点以下を対象とする。  

ただし、 直近6か月以内に、 治療中であるにもかかわらず再発した場合は、 Barthel Indexで90点以上であっても、 対象とする。  

※治療とは、 抗凝固療法や補充療法 (新鮮凍結血漿かつ/又は AT製剤、 活性化PC製剤、 乾燥人血液凝固第Ⅸ因子複合体製剤など) を指す。

Barthel Indexの質問項目²⁾ 

食事

  • 自立、 自助具などの装着可、 標準的時間内に食べ終える +10
  • 部分介助 (例えば、 おかずを切って細かくしてもらう) +5
  • 全介助 0

車椅子からベッドへの移動

  • 自立、 ブレーキ、 フットレストの操作も含む (歩行自立も含む) +15
  • 軽度の部分介助又は監視を要する +10
  • 座ることは可能であるがほぼ全介助 +5
  • 全介助又は不可能 0

整容

  • 自立 (洗面、 整髪、 歯磨き、 ひげ剃り) +5
  • 部分介助又は不可能 0

トイレ動作

  • 自立 (衣服の操作、 後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む) +10
  • 部分介助、 体を支える、 衣服、 後始末に介助を要する +5
  • 全介助又は不可能 0

入浴

  • 自立 +5
  • 部分介助又は不可能 0

歩行

  • 45m以上の歩行、 補装具 (車椅子、 歩行器は除く) の使用の有無は問わず +15
  • 45m以上の介助歩行、 歩行器の使用を含む +10
  • 歩行不能の場合、 車椅子にて 45m以上の操作可能 +5
  • 上記以外 0

階段昇降

  • 自立、 手すりなどの使用の有無は問わない +10
  • 介助又は監視を要する +5
  • 不能 0

着替え

  • 自立、 靴、 ファスナー、 装具の着脱を含む +10
  • 部分介助、 標準的な時間内、 半分以上は自分で行える +5
  • 上記以外 0

排便コントロール

  • 失禁なし、 浣腸、 坐薬の取扱いも可能 +10
  • ときに失禁あり、 浣腸、 坐薬の取扱いに介助を要する者も含む +5
  • 上記以外 0

排尿コントロール

  • 失禁なし、 収尿器の取扱いも可能 +10
  • ときに失禁あり、 収尿器の取扱いに介助を要する者も含む +5
  • 上記以外 0

参考文献

  1. 厚生労働省. 「平成29年4月1日施行の指定難病 (告示番号307~330) 特発性血栓症 (遺伝性血栓性素因によるものに限る。 ) 概要・診断基準等」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000156608.docx (参照2023-2-21)
  2. FUNCTIONAL EVALUATION: THE BARTHEL INDEX. Md State Med J. 1965 Feb;14:61-5. PMID: 14258950
 
最終更新:2023年2月21日
監修医師:HOKUTO編集部医師

特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る。)の診断基準・重症度分類
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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指定難病327
2023年02月27日更新
概要
計算

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診断のカテゴリー

Definite    Aの1項目以上+Bの1項目以上を満たし、 Cを除外し、 Dを満たすもの

Probable  Aの1項目以上+Bの1項目以上を満たし、 Cを除外し、 Eの2項目以上を満たすもの

Possible   Aの1項目以上+Bの1項目以上を満たし、 Cを除外したもの

指定難病申請は「Definite」「Probable」が対象

A.症状

年齢に応じて好発する症状に差がみられる。   

 

1. 新生児・乳児期 (0~1歳未満)

胎児脳室拡大 (水頭症) 、 新生児脳出血・梗塞、 脳静脈洞血栓症、 電撃性紫斑病、 硝子体出血。 皮膚の出血斑、 血尿などがしばしばみられる。 

2. 小児期 (1歳以上18歳未満) ・成人 (18歳以上)

静脈血栓塞栓症 (深部静脈血栓症、 肺塞栓症、 脳静脈洞血栓症、 上腸間膜静脈血栓症など)、 動脈血栓症 (脳梗塞など)。 
小児期では、脳出血・梗塞で発症する割合が多い。 成人女性は、習慣流産を来す場合もある。
※長時間不動、 外傷、 手術侵襲、 感染症、 脱水、 妊娠・出産、 女性ホルモン剤服用などが発症の誘因となることがある。
※症状には、 CT、 MRI、 超音波等の画像検査にて確認された無症候性のものも含む。

B.検査所見 

1.血漿PC活性 成人基準値の下限値未満 

2.血漿PS活性 成人基準値の下限値未満 

3.血漿AT活性 成人基準値の下限値未満 

※いずれの活性も、 それぞれの測定法での基準値に準拠する。
※18歳未満の症例については、 年齢別下限値 (表1) を参照する。  
※複数回測定にて、 ビタミン K 拮抗薬服用、 肝機能障害、 妊娠、 女性ホルモン剤使用、 ネフローゼ症候群、 血栓症の発症急性期、 感染症などによる二次的活性低下を除外する。  
※ビタミン K 欠乏 (特に新生児・乳児) と消費性凝固障害による影響を考慮して判断するために各活性測定時に、 FVII 活性及び PIVKAII を同時に測定することが望ましい。
特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る。)の診断基準・重症度分類

C.鑑別診断 

PC、 PS、 AT 欠乏症以外の遺伝性血栓性素因に伴う血栓傾向および血小板の異常 (骨髄増殖性腫瘍など) 、 血管障害、 血流障害、 抗リン脂質抗体症候群、 悪性腫瘍など

新生児期~小児期では、更に以下の疾患を鑑別

<新生児期>  仮死、 RDS、 母体DM、 壊死性腸炎、 新生児抗リン脂質抗体症候群など
<乳児期・小児期>  川崎病、 心不全、 DM、 鎌状貧血、 サラセミアなど

D.遺伝学的検査 

AT 遺伝子 (SERPINC1) 、 PC 遺伝子 (PROC) 、 PS 遺伝子 (PROS1) のいずれかに病因となる変異が同定されること。   

E.遺伝性を示唆する所見 

  1. 若年性 (40歳以下) 発症 
  2. 繰り返す再発 (特に適切な抗凝固療法や補充療法中の再発)  
  3. まれな部位 (脳静脈洞、 上腸間膜静脈など) での血栓症発症 
  4. 発端者と同様の症状を示す患者が家系内に1名以上存在

重症度分類 🔢計算はこちら

機能的評価:Barthel Index²⁾ 85点以下を対象とする。  

ただし、 直近6か月以内に、 治療中であるにもかかわらず再発した場合は、 Barthel Indexで90点以上であっても、 対象とする。  

※治療とは、 抗凝固療法や補充療法 (新鮮凍結血漿かつ/又は AT製剤、 活性化PC製剤、 乾燥人血液凝固第Ⅸ因子複合体製剤など) を指す。

Barthel Indexの質問項目²⁾ 

食事

  • 自立、 自助具などの装着可、 標準的時間内に食べ終える +10
  • 部分介助 (例えば、 おかずを切って細かくしてもらう) +5
  • 全介助 0

車椅子からベッドへの移動

  • 自立、 ブレーキ、 フットレストの操作も含む (歩行自立も含む) +15
  • 軽度の部分介助又は監視を要する +10
  • 座ることは可能であるがほぼ全介助 +5
  • 全介助又は不可能 0

整容

  • 自立 (洗面、 整髪、 歯磨き、 ひげ剃り) +5
  • 部分介助又は不可能 0

トイレ動作

  • 自立 (衣服の操作、 後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む) +10
  • 部分介助、 体を支える、 衣服、 後始末に介助を要する +5
  • 全介助又は不可能 0

入浴

  • 自立 +5
  • 部分介助又は不可能 0

歩行

  • 45m以上の歩行、 補装具 (車椅子、 歩行器は除く) の使用の有無は問わず +15
  • 45m以上の介助歩行、 歩行器の使用を含む +10
  • 歩行不能の場合、 車椅子にて 45m以上の操作可能 +5
  • 上記以外 0

階段昇降

  • 自立、 手すりなどの使用の有無は問わない +10
  • 介助又は監視を要する +5
  • 不能 0

着替え

  • 自立、 靴、 ファスナー、 装具の着脱を含む +10
  • 部分介助、 標準的な時間内、 半分以上は自分で行える +5
  • 上記以外 0

排便コントロール

  • 失禁なし、 浣腸、 坐薬の取扱いも可能 +10
  • ときに失禁あり、 浣腸、 坐薬の取扱いに介助を要する者も含む +5
  • 上記以外 0

排尿コントロール

  • 失禁なし、 収尿器の取扱いも可能 +10
  • ときに失禁あり、 収尿器の取扱いに介助を要する者も含む +5
  • 上記以外 0

参考文献

  1. 厚生労働省. 「平成29年4月1日施行の指定難病 (告示番号307~330) 特発性血栓症 (遺伝性血栓性素因によるものに限る。 ) 概要・診断基準等」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000156608.docx (参照2023-2-21)
  2. FUNCTIONAL EVALUATION: THE BARTHEL INDEX. Md State Med J. 1965 Feb;14:61-5. PMID: 14258950
 
最終更新:2023年2月21日
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