内容
監修医師
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません.  個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

5つのポイント

  • 2週間以上の咳、体重減少、寝汗、血痰で疑う!
  • 肺尖部病変が多いが、 非典型的画像も多い!
  • 喀痰抗酸菌染色(AFB)、 喀痰PCR、 IGRA (T-SPOT/QFT)の使い所を整理する!
  • 抗結核薬の副作用は必ず記憶しておく!
  • 2類感染症、診断後直ちに保健所に届ける!

結核の病態

Mycobacterium tuberculosis complex (M.bovis BCGは除く)による感染症である.
  • 咳、 体重減少、 倦怠感、 発熱、 盗汗、 血痰など主に呼吸器症状がみられる.
  • 全身血行性に散布したものを粟粒結核と呼び、 肺・骨髄・腎・肝・脾像・中枢神経に及ぶ.
  • 未感染者が結核菌に感染して起こる諸症状を「一次結核」、 それから数年以上経過した後に出る諸症状を「二次結核」と呼ぶ (成人の結核の大部分は二次結核である).

どのような時に疑うか

2週間以上続く咳嗽+体重減少、寝汗、血痰

7日以内に改善しない 「肺炎」

上葉、またはS6の陰影

結核リスク*がある

*結核既往歴、HIV、糖尿病、免疫抑制薬、化学療法、悪性腫瘍、珪肺、高蔓延国居住歴、路上生活者、IGRA陽性者など

感染経路は「空気感染」である

👨‍⚕️医療者はN95マスクを着用、 陰圧個室管理.

🏥患者はサージカルマスクを着用.

「2類感染症」として速やかな届け出

結核 (疑似症、 LTBI含む) と診断後、 改正感染症法第12条第1項による届け出を直ちに行う.

届け出を忘れると公費負担が受けられず、 トラブルになるので注意が必要!

画像所見は一次と二次で異なる

一次結核

肺門リンパ節(全体の2/3)、 胸水 (全体の1/3)、 肺浸潤影 (全体の1/4) ²⁾

二次結核 (成人に多い)

上葉S1/2(8~9割)など換気•血流比の良好な箇所に浸潤影ができやすい. 他にS6に多いが非典型画像も多く画像の分布で結核は否定できない. 2~4割に空洞影を認める³⁾

※空洞病変は菌量の多さを表す、ただしHIV患者では起きにくい

典型的な画像所見

胸部単純X線写真

胸部単純X線写真では, 濃淡のある浸潤影粒状・結節影の集簇が認められ, 空洞がみられることもある. 好発部位は上葉や下葉S6で, 薄層CTでは, これらの領域に区域性の浸潤影小葉中心性粒状影, 分岐状影, 結節影がみられ, 時に融合して濃厚な陰影を呈する. 肉芽腫による粒状影は周囲肺とのコントラストが高いことが特徴的である.

結核 ・ 肺外結核

胸部CT

高次の呼吸細気管支に至る小葉中心性の陰影はtree-in-bud appearanceと呼ばれる.

結核 ・ 肺外結核

結核の検査と意義

喀痰抗酸菌染色 (AFB)

喀痰、 胃液、 気管支肺胞洗浄(BAL)液、 胸水など. 簡便だが感度は低い.3回陰性でも感度は70%程度であり結核は否定できない

培養検査

結核菌はslow-growerであり発育に数週間必要.感受性検査を行うことができる

PCR法

GeneXpert®2時間程度で判明、 Xpert MTB/RIFではRFP耐性かどうかわかる

IGRA検査

T-SPOT/QuantiFERON(QFT):感度の高い検査だが、 陽性でも活動性結核かLTBIかは判定できない.平日日中にしか提出できない場合が多く注意が必要

病理検査

乾酪壊死などの特徴的な病変

ツベルクリン反応

免疫不全者では偽陰性の可能性、 BCG接種の影響を除外できない

治療例

肺結核/肺外結核 (中枢神経、骨除く)

INH+RFP+EB+PZA (または INH+RFP+SM+PZA) の4剤で2ヶ月の強化療法後、 INH+RFPで4ヶ月の維持療法を行い、 合計6ヶ月(180日間) の治療を行う.

INH:イソニアジド (腎不全で用量調整不要)

RFP:リファンピシン (腎不全で用量調整不要)

EB:エタンブトール (腎不全で用量調整必要)

PZA:ピラジナミド (腎不全で用量調整必要)

SM:ストレプトマイシン(腎不全の場合避ける)

※INHはピリドキシン(VitB6)を併用する.
※EBは視力障害がある場合避ける.
※SMは注射薬で週2回来院要.聴力障害、腎障害、妊婦は避ける.

表1:結核治療の標準的スケジュール

結核 ・ 肺外結核

表2:体重60kgの成人に対する腎機能別投与例

結核 ・ 肺外結核
※治療初期は治療が奏効していても画像や症状が増悪することもある(paradoxical reaction)が、 必ずしも治療の変更は必要ではない.

なお下記の条件下では、 強化療法を3ヶ月、 維持療法を6ヶ月、 合計9ヶ月(270日間)行うことができる.

  • 結核再治療例
  • 治療開始時に重症
  • 有空洞(特に広汎空洞型)、 粟粒結核
  • 排菌陰性化遅延
  • 初期 2 ヶ月の治療後も培養陽性
  • 免疫低下を伴う合併症
  • HIV感染、 糖尿病、 塵肺、 関節リウマチ等の自己免疫疾患など
  • 免疫抑制剤等の使用
  • 副腎皮質ステロイド剤、 その他の免疫抑制剤
  • その他
  • 骨関節結核で病巣の改善が遅延している場合など

鑑別疾患 (一部)

  • 非結核性抗酸菌症
  • 細菌性肺炎、 細菌性気管支炎
  • ニューモシスチス肺炎(PCP)
  • 肺アスペルギルス症
  • ノカルジア症
  • COVID-19肺炎
  • 気管支拡張症
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 肺癌
  • 良性腫瘍
  • 肺吸虫症

多剤耐性結核

  • INHおよびRFPに耐性がある結核を多剤耐性結核(MDR-TB)と呼ぶ.
  • 多剤耐性結核の治療については参考文献⁴⁾参照の上、 専門家に相談を.

参考文献

  1. 厚生労働省 「感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-02-02.html, (参照 2022-07-06)
  2. Tuberculosis: a radiologic review. Radiographics. Sep-Oct 2007;27(5):1255-73. PMID: 17848689
  3. Chest roentgenogram in pulmonary tuberculosis. New data on an old test. PMID: 2456183C
  4. 日本結核・非結核性抗酸菌症学会「結核」第93巻 第1号2018年1月https://www.kekkaku.gr.jp/pub/vol93(2018)/vol93no1p61-68.pdf (参照 2022-07-06)
  5. 長崎みなとメディカルセンター放射線科診療部長 福島文先生 他, 月間カレントテラピ誌 「咳と画像:咳嗽をきたす原因疾患と画像所見」
結核 ・ 肺外結核
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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tuberculosis
2022年09月07日更新
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません.  個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

5つのポイント

  • 2週間以上の咳、体重減少、寝汗、血痰で疑う!
  • 肺尖部病変が多いが、 非典型的画像も多い!
  • 喀痰抗酸菌染色(AFB)、 喀痰PCR、 IGRA (T-SPOT/QFT)の使い所を整理する!
  • 抗結核薬の副作用は必ず記憶しておく!
  • 2類感染症、診断後直ちに保健所に届ける!

結核の病態

Mycobacterium tuberculosis complex (M.bovis BCGは除く)による感染症である.
  • 咳、 体重減少、 倦怠感、 発熱、 盗汗、 血痰など主に呼吸器症状がみられる.
  • 全身血行性に散布したものを粟粒結核と呼び、 肺・骨髄・腎・肝・脾像・中枢神経に及ぶ.
  • 未感染者が結核菌に感染して起こる諸症状を「一次結核」、 それから数年以上経過した後に出る諸症状を「二次結核」と呼ぶ (成人の結核の大部分は二次結核である).

どのような時に疑うか

2週間以上続く咳嗽+体重減少、寝汗、血痰

7日以内に改善しない 「肺炎」

上葉、またはS6の陰影

結核リスク*がある

*結核既往歴、HIV、糖尿病、免疫抑制薬、化学療法、悪性腫瘍、珪肺、高蔓延国居住歴、路上生活者、IGRA陽性者など

感染経路は「空気感染」である

👨‍⚕️医療者はN95マスクを着用、 陰圧個室管理.

🏥患者はサージカルマスクを着用.

「2類感染症」として速やかな届け出

結核 (疑似症、 LTBI含む) と診断後、 改正感染症法第12条第1項による届け出を直ちに行う.

届け出を忘れると公費負担が受けられず、 トラブルになるので注意が必要!

画像所見は一次と二次で異なる

一次結核

肺門リンパ節(全体の2/3)、 胸水 (全体の1/3)、 肺浸潤影 (全体の1/4) ²⁾

二次結核 (成人に多い)

上葉S1/2(8~9割)など換気•血流比の良好な箇所に浸潤影ができやすい. 他にS6に多いが非典型画像も多く画像の分布で結核は否定できない. 2~4割に空洞影を認める³⁾

※空洞病変は菌量の多さを表す、ただしHIV患者では起きにくい

典型的な画像所見

胸部単純X線写真

胸部単純X線写真では, 濃淡のある浸潤影粒状・結節影の集簇が認められ, 空洞がみられることもある. 好発部位は上葉や下葉S6で, 薄層CTでは, これらの領域に区域性の浸潤影小葉中心性粒状影, 分岐状影, 結節影がみられ, 時に融合して濃厚な陰影を呈する. 肉芽腫による粒状影は周囲肺とのコントラストが高いことが特徴的である.

結核 ・ 肺外結核

胸部CT

高次の呼吸細気管支に至る小葉中心性の陰影はtree-in-bud appearanceと呼ばれる.

結核 ・ 肺外結核

結核の検査と意義

喀痰抗酸菌染色 (AFB)

喀痰、 胃液、 気管支肺胞洗浄(BAL)液、 胸水など. 簡便だが感度は低い.3回陰性でも感度は70%程度であり結核は否定できない

培養検査

結核菌はslow-growerであり発育に数週間必要.感受性検査を行うことができる

PCR法

GeneXpert®2時間程度で判明、 Xpert MTB/RIFではRFP耐性かどうかわかる

IGRA検査

T-SPOT/QuantiFERON(QFT):感度の高い検査だが、 陽性でも活動性結核かLTBIかは判定できない.平日日中にしか提出できない場合が多く注意が必要

病理検査

乾酪壊死などの特徴的な病変

ツベルクリン反応

免疫不全者では偽陰性の可能性、 BCG接種の影響を除外できない

治療例

肺結核/肺外結核 (中枢神経、骨除く)

INH+RFP+EB+PZA (または INH+RFP+SM+PZA) の4剤で2ヶ月の強化療法後、 INH+RFPで4ヶ月の維持療法を行い、 合計6ヶ月(180日間) の治療を行う.

INH:イソニアジド (腎不全で用量調整不要)

RFP:リファンピシン (腎不全で用量調整不要)

EB:エタンブトール (腎不全で用量調整必要)

PZA:ピラジナミド (腎不全で用量調整必要)

SM:ストレプトマイシン(腎不全の場合避ける)

※INHはピリドキシン(VitB6)を併用する.
※EBは視力障害がある場合避ける.
※SMは注射薬で週2回来院要.聴力障害、腎障害、妊婦は避ける.

表1:結核治療の標準的スケジュール

結核 ・ 肺外結核

表2:体重60kgの成人に対する腎機能別投与例

結核 ・ 肺外結核
※治療初期は治療が奏効していても画像や症状が増悪することもある(paradoxical reaction)が、 必ずしも治療の変更は必要ではない.

なお下記の条件下では、 強化療法を3ヶ月、 維持療法を6ヶ月、 合計9ヶ月(270日間)行うことができる.

  • 結核再治療例
  • 治療開始時に重症
  • 有空洞(特に広汎空洞型)、 粟粒結核
  • 排菌陰性化遅延
  • 初期 2 ヶ月の治療後も培養陽性
  • 免疫低下を伴う合併症
  • HIV感染、 糖尿病、 塵肺、 関節リウマチ等の自己免疫疾患など
  • 免疫抑制剤等の使用
  • 副腎皮質ステロイド剤、 その他の免疫抑制剤
  • その他
  • 骨関節結核で病巣の改善が遅延している場合など

鑑別疾患 (一部)

  • 非結核性抗酸菌症
  • 細菌性肺炎、 細菌性気管支炎
  • ニューモシスチス肺炎(PCP)
  • 肺アスペルギルス症
  • ノカルジア症
  • COVID-19肺炎
  • 気管支拡張症
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 肺癌
  • 良性腫瘍
  • 肺吸虫症

多剤耐性結核

  • INHおよびRFPに耐性がある結核を多剤耐性結核(MDR-TB)と呼ぶ.
  • 多剤耐性結核の治療については参考文献⁴⁾参照の上、 専門家に相談を.

参考文献

  1. 厚生労働省 「感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-02-02.html, (参照 2022-07-06)
  2. Tuberculosis: a radiologic review. Radiographics. Sep-Oct 2007;27(5):1255-73. PMID: 17848689
  3. Chest roentgenogram in pulmonary tuberculosis. New data on an old test. PMID: 2456183C
  4. 日本結核・非結核性抗酸菌症学会「結核」第93巻 第1号2018年1月https://www.kekkaku.gr.jp/pub/vol93(2018)/vol93no1p61-68.pdf (参照 2022-07-06)
  5. 長崎みなとメディカルセンター放射線科診療部長 福島文先生 他, 月間カレントテラピ誌 「咳と画像:咳嗽をきたす原因疾患と画像所見」
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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