【NEJM】トフェルセン投与、SOD1変異を有するALSの症状改善に繋がらず
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1年前

【NEJM】トフェルセン投与、SOD1変異を有するALSの症状改善に繋がらず

【NEJM】トフェルセン投与、SOD1変異を有するALSの症状改善に繋がらず
Millerらは, SOD1の遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症 (SOD1 ALS) 患者を対象に, トフェルセンの有効性を検討する第Ⅲ相試験を実施. その結果, トフェルセンは脳脊髄液 (CSF) 中のSOD1および血漿中のニューロフィラメント軽鎖の濃度を減少させたが, 臨床エンドポイントを改善させず, 神経系の重篤な有害事象と関係していることが明らかとなった. 本研究は, NEJM誌において発表された. 

📘原著論文

Trial of Antisense Oligonucleotide Tofersen for SOD1 ALS. N Engl J Med. 2022 Sep 22;387(12):1099-1110.PMID: 36129998

👨‍⚕️HOKUTO監修医コメント

トフェルセン(tofersen)は, FDAが新薬承認申請を受理したばかりでしたが, 本研究成果からは 「SOD1遺伝子異常のALSに対してトフェルセンの臨床効果は認められなかった」と言わざるを得ません. ALSに対してはさまざまな民間療法まで行われている現状がありますので, 1つずつ科学的検証をもとに明らかにしていく必要がありそうです.


背景

トフェルセンはSOD1タンパク質合成を低下させることが知られており, SOD1の遺伝子変異を有するALS患者を対象に研究が行われている.

研究デザイン

対象と方法

  • SOD1 ALSの成人を2:1の割合で無作為に割り付け.
  • トフェルセン群:72名
(24週間にわたりトフェルセン100 mgを8回投与)
  • プラセボ群:36名
(プラセボを8回投与)

評価項目

  • 主要評価項目:ALSFRS-Rの28週目までの総スコアの変化.
  • 副次評価項目:CSF中の SOD1 タンパク質濃度の変化, 血漿中の神経フィラメント軽鎖濃度の変化, 肺活量, 16の筋肉のハンドヘルドダイナモメトリーの変化.

研究結果

有効性評価

  • トフェルセン群はプラセボ群に比べ, CSFのSOD1および血漿のニューロフィラメント軽鎖の濃度を大きく低下させた.
  • 進行が速いと予測されたサブグループ (トフェルセン群:39名, プラセボ群:21名) の28週目までのALSFRS-Rスコアの変化
  • トフェルセン群:-6.98
  • プラセボ群:-8.14
差 1.2ポイント, 95%CI -3.2-5.5, P=0.97
  • 副次評価項目は, 両群間で有意な差は認められなかった.

非盲検延長試験

  • 合計95名 (88%) が非盲検延長試験に参加した.
  • 52 週の時点でのALSFRS-R スコアの変化
  • 早期開始群:-6.0
(試験登録時からトフェルセンを投与)
  • 遅延開始群:-9.5
(28週時点にプラセボからトフェルセンに切り替え)
差 3.5ポイント, 95%CI 0.4-6.7
  • その他の評価項目では, 多重性の調整をしない解析で, 早期開始群が有利であった.

安全性評価

  • 腰椎穿刺に関連する有害事象は一般的であった.
  • 神経系の重篤な有害事象は, トフェルセン投与者の7%に発生した.

結論

SOD1 ALS患者において, トフェルセンは28週間にわたり, CSF中のSOD1および血漿中のニューロフィラメント軽鎖の濃度を減少させたが, 臨床エンドポイントは改善せず, 有害事象と関連していた. なお, 本試験の延長試験において, 投与開始時期を早めた場合と遅らせた場合の潜在的な効果について, さらに評価を行っている.

こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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