5つのポイント
病態・疫学
- 腹痛患者の2-3%が尿管結石といわれる¹⁾
- 脱水傾向となる夏、早朝4時台にピーク²⁾
- 男性では30歳代、女性では35-55歳で多い.
診断
1. 尿路結石症の症候³⁾
- 片側腰部痛(LR+34)、CVA叩打痛(LR+30)
- 尿路結石症は動きまわることが多い.
- 疼痛は間欠的>持続痛であることが多い.
- 肉眼的血尿は認めないことが多い.
- 痛みとともに血尿があれば強く疑う.
- 結石症既往、鼠径部放散痛、嘔気も参考に.
- 発熱があれば腎孟腎炎の合併や、尿管結石以外の疾患を考える必要がある.
2. 尿路結石症状の診断
- 診断はまずエコー (50~70%で結石描出)
- 結石像と腎孟や尿管拡大が所見として重要.
- 同時に重要な鑑別疾患である腹部大動脈瘤や解離のスクリーニングを行う.
- 他鑑別を疑わなければ、 腹部単純CTで確定診断.
右尿管の拡張、 水腎症の所見あり.
右が翌日. 周囲脂肪織混濁、 右尿管膀胱移行部に結石あり.
診断予測スコア
以下のスコアが知られている. 典型的な尿路結石の経過で、 スコアからも高い可能性が示唆される場合にはエコーのみで腹部CTは省略できるかもしれない.
🔢 CHOKAIスコア
日本人作成の尿路結石予測モデルであり、 6点以上で尿路結石の可能性が高い。
🔢 STONEスコア
海外で作成された尿路結石症予測モデルで、 10点以上で尿路結石症の可能性が高い。
診断の注意点
- 25%はCVA叩打痛が陰性.
- 10~30%は尿潜血が陰性.
- Xpで分かる結石は6割、 CTならほぼ100%
- エコーは水腎症に対しての感度が高いが、 結石自体へは感度50%以下 (静脈石と間違えやすい)
尿路結石症の鑑別疾患
- 裂ける:大動脈解離、SMA解離など
- つまる:SMA塞栓、腎梗塞など
- 破れる:大動脈瘤破裂、胃潰瘍穿孔など
- 捻れる:卵巣捻転、出血など
- その他:後腹膜膿瘍、腎盂腎炎、虫垂炎、膵炎
治療
聖路加国際病院 救急部 清水真人先生作成
保存的治療
- 水腎症(−)、結石≦5mmなどは保存的治療.
- 主に鎮痛管理 (NSAIDs、ペンタジン筋注).
- α1遮断薬⁴⁾、 Caチャネル遮断薬⁴⁾、 ウロカルン、 抗コリン薬に強いエビデンスなし.
- 点滴負荷±利尿剤にも強いエビデンスなし⁵⁾.
積極的治療
- 繰り返す激しい疼痛や、腎機能低下を伴う水腎症、 片腎患者等では、 結石除去法を選択.
- ESWL、TUL等の方法があるが、使い分けはガイドラインを参照すると良い.
- また、結石性腎盂腎炎など緊急を要する場合はD-Jステントによるドレナージ.
発熱時の対応
- 発熱時は結石性腎盂腎炎の可能性あり、 培養セット、 抗生剤投与、 専門医コンサルトでD-Jステント挿入によるドレナージ.
自然排石率⁵⁾
- ≦1mm :87%
- 2-4mm:76%
- 5-7mm:60%
- 7-9mm:48%
- ≧9mm :25%
5mm以下なら帰宅経過観察、5~10mmなら水腎症の有無で専門医紹介検討、≧10mmは専門医紹介
参考文献
- J Clin Pathol. 2005 Feb:58(2):134-40
- BMJ 2002 Mar 30:324(7340) 767.
- Am J Emerg Med. 2018 Dec;36(12):2187-91.
- Lancet. 2015 Jul 25;386(9991):341-9.
- Emerg Med Clin North Am. 2011 Aug;29(3):519-38.
関連コンテンツ
🚑 ERマニュアル|腹痛
🚑 ERマニュアル|腰痛
🔢 CHOKAIスコア
🔢 STONEスコア
📖 急性腹症診療ガイドライン 2015
📖 尿路結石症診療ガイドライン 2013
最終更新:2022年9月17日
監修医師:聖路加国際病院救急部 清水真人