【年間800件】訴訟リスクが高い診療科は?裁判所、厚労省データ
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医師のためのLIFESTYLE特集

2年前

【年間800件】訴訟リスクが高い診療科は?裁判所、厚労省データ

【年間800件】訴訟リスクが高い診療科は?裁判所、厚労省データ
医師として働く場合, 医療訴訟リスクについて考えなければなりません. 今回は医療訴訟の件数やリスクの高い診療科について紹介します. 

1. 医療訴訟の新受件数

医療訴訟とは医療行為が問題となる民事事件のことです. 医事関係訴訟ともいい, 医療従事者の注意義務違反や医療ミスが原因で患者側に損害が生じる医療過誤を立証し, 患者側が医療従事者に対して損害賠償責任を請求します. 業務上過失致死罪で, 刑事訴訟として扱われるケースもあります.

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書 (裁判所) によると, 医事関係訴訟の新受件数は2004年の1089件をピークに減少傾向ですが, 近年は700〜900件の間を推移しています.

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2. 訴訟リスクが高い診療科

医事関係訴訟の2021年診療科別既済件数は, 内科が238件でトップ. 次に歯科が100件, 外科が98件と続きます. ただし, 内科医は人数も多いため, 医師数に対する訴訟リスクは外科や産婦人科, 整形外科, 形成外科が高くなっているようです.

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勤務医の就労実態と意識に関する調査 (独立行政法人労働政策研究・研修機構) によると, 患者からの訴訟リスクに対する認識は産婦人科が最も高く, 外科や救急科も上位に上がります. 医師の訴訟リスクに対する認識と実際の医事関係訴訟既済件数は関係していると言えそうです.

3. 訴訟の審理期間

医事関係訴訟は全体の民事第一審訴訟に比べて, 約2.7倍審理期間が長いです. 患者から訴訟された場合, 審理まで2〜3年かかると見込んでおく必要があるでしょう.

審理期間が長い理由は, 医事関係訴訟が専門知識に基づく判断を必要とし, 専門家である鑑定人を見つけるのが一般的に困難だからです.

そこで最高裁判所では, 医師や弁護士などでつくる医事関係訴訟委員会を設け, 学会や裁判所と連携しながら鑑定人候補者の選定を行っています. こうした段取りを踏むことで, 審理期間が長くなっています.

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4. リスク管理を高める

医事関係訴訟の勝訴率は例年20%前後です. 訴訟が起きたとしても患者側が負け, 医師側が勝つ確率が高くなっています. 訴訟で患者が負ける理由は証拠が足りないケースが多いからです.

証拠とはすなわちカルテです. カルテには治療の詳細だけでなく, 診察室で医師と話した内容など詳細な情報が書き込まれています. 時系列に見れば, 当該の医療行為が明らかになります.

厚生労働省のスタンスとしてはカルテの開示は患者の権利で, 医療機関はカルテを開示することが原則というスタンスをとっています. 問題なのは医療機関側がカルテの主要部分を開示しないことです. 原告側がカルテを読み解くことができず, 十分なカルテではないと判断できない実情が多く, 結果的に患者側の敗訴につながるのです.

近年は電子カルテが普及し, 追記や修正の履歴も残るためデータの改ざんが難しい状況です. そもそも, データの改ざんは悪いことです. 医師自身, そして患者の身を守るためにも, 日々のカルテに医療行為の詳細を記録することが訴訟リスクを抑えることにつながるでしょう.

こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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