治療スケジュール
概要
監修医師

DXR:ドキソルビシン(アドリアシン®)

投与量コース投与日
25mg/m² 点滴静注1~Day 1、15

BLM:ブレオマイシン(ブレオ®)

投与量コース投与日
10mg/m² 点滴静注1~Day 1、15
(最大15mg)--

VLB:ビンブラスチン(エクザール®)

投与量コース投与日
6mg/m² 点滴静注1~Day 1、15
(最大10mg)--

DTIC:ダカルバジン(ダカルバジン®)

投与量コース投与日
375mg/m² 点滴静注1~Day 1、15
*遮光--

前投薬

5-HT3受容体拮抗薬を使用.
NK1受容体拮抗薬の使用を考慮.

その他

1コースは28日間.
ABVdの場合は、 ブレオマイシン9mg/m²、 ダカルバジン250mg/m²に減量.
DXRやVBLは静注も可. 各施設の運用方針による.
レジメン
ABVD / ABVd
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

主な有害事象

N Engl J Med. 2018 Jan 25;378(4):331-344.¹⁾より引用

骨髄抑制

  • 好中球減少 (≧Grade3 39%)
  • 貧血 (≧Grade3 4%)

重大な有害事象

  • 嘔気 (56%)
  • 嘔吐 (28%)
  • 便秘 (37%)
  • 下痢 (18%)
  • 腹痛 (10%)
  • 倦怠感 (32%)
  • 食欲不振 (12%)
  • 末梢神経障害 (13%)
  • 感覚障害 (17%)
  • 口内炎 (16%)
  • 脱毛症 (22%)
  • 骨痛 (10%)
  • 関節痛 (12%)
  • 不眠症 (12%)
  • 発熱 (22%)
  • 咳嗽 (19%)
  • 頭痛 (14%)
  • ディスペプシア (11%)
  • 呼吸困難 (19%)
  • 筋肉痛 (11%)
  • 四肢痛 (10%)
  • 上気道感染 (11%)

特徴と注意点

ABVD療法

  • ABVD療法は未治療ホジキンリンパ腫に対する標準治療の一つ.
  • 限局期ホジキンリンパ腫:ABVD 4コース後に放射線治療.
  • 進行期ホジキンリンパ腫:ABVD 6 or 8コース (4・6コース後にCTで効果判定、 最初のCR判定から2コース追加、 最大8コース).

ABVd療法

  • ダカルバジンを2/3に減量した変法ダカルバジンの消化器毒性の軽減を目的として、 JCOG9305試験で検証された.²⁾
  • 有効性は同等で、 消化器症状は減少したと報告されているが、 ABVDとの直接比較試験はない.²⁾
  • 海外ではABVD療法 (ダカルバジンはfull-dose)が主流.
  • 制吐剤の進歩により消化器症状のコントロールが改善したことと、 投与施設や患者状態を考慮し選択を検討する.

副作用と対策

  • 腫瘍量が多い場合、 腫瘍崩壊症候群が出現するため、 十分な予防が必要.
  • ドキソルビシンには累積心毒性があるため、 累積上限量は500mg/m².
  • ドキソルビシン、 ビンブラスチンは壊死性抗がん剤であるため、 血管外漏出に注意.
  • ブレオマイシンは、 間質性肺炎・肺線維症などの肺障害のリスクがあり、 累積上限量は300mg.
  • 嘔気・嘔吐など消化器毒性が強いため、 NK1受容体拮抗薬を含めた制吐療法を考慮.

投与の際の注意点

  • ドキソルビシン、 ビンブラスチンは壊死性抗がん剤であるため、 血管外漏出に注意.
  • ダカルバジンは光分解物により血管痛を起こすため、 点滴経路全般を遮光して投与.

関連する臨床試験の結果

N Engl J Med.1992 Nov 19;327(21):1478-84.³⁾

概要

  • 進行期ホジキンリンパ腫に対する多施設共同ランダム化比較試験. 
  • MOPP療法、 ABVD療法、 MOPP-ABVD交替療法の三群間において、 完全奏効率、 無病生存率、 毒性を比較. 

結果

  • 完全奏効率:MOPP群 67%、 ABVD群 82%、 MOPP-ABVD群 83%. DXRを含む治療群で有意に高かった (p=0.006) . 
  • 完全奏効を示した患者の無病生存率は5年で66%であり、 治療法によって差は無かった.
  • 5年後の無病生存率:MOPP群 50%、 ABVD群 61%、 MOPP-ABVD群 65%. 各治療群で有意差が認められた (MOPP単独と他レジメン群との比較ではp= 0.02).
  • 全5年生存率:MOPP群 66%、 ABVD群 73%、 MOPP-ABVD群 75% (MOPP単独と他レジメン群との比較ではP = 0.28).
  • MOPP療法を含むレジメン群では、 好中球減少症は47~53%であり、 重篤なものは21~28%であったが、 ABVD単独ではそれぞれ18%と3%と有意に少なかった (P <0.001).
  • 重度の肺毒性はABVD療法を含むレジメン群に6%発生した. 

参考文献

  1. N Engl J Med. 2018 Jan 25;378(4):331-344.
  2. Int J Hematol. 2010 Dec;92(5):713-24.
  3. N Engl J Med.1992 Nov 19;327(21):1478-84.

最終更新:2022年8月19日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

レジメン
ABVD / ABVd
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
レジメン
ABVD / ABVd
レジメン
ABVD / ABVd

ABVD / ABVd

ドキソルビシン、 ブレオマイシン、 ビンブラスチン、 ダカルバジン
2023年06月07日更新

DXR:ドキソルビシン(アドリアシン®)

投与量コース投与日
25mg/m² 点滴静注1~Day 1、15

BLM:ブレオマイシン(ブレオ®)

投与量コース投与日
10mg/m² 点滴静注1~Day 1、15
(最大15mg)--

VLB:ビンブラスチン(エクザール®)

投与量コース投与日
6mg/m² 点滴静注1~Day 1、15
(最大10mg)--

DTIC:ダカルバジン(ダカルバジン®)

投与量コース投与日
375mg/m² 点滴静注1~Day 1、15
*遮光--

前投薬

5-HT3受容体拮抗薬を使用.
NK1受容体拮抗薬の使用を考慮.

その他

1コースは28日間.
ABVdの場合は、 ブレオマイシン9mg/m²、 ダカルバジン250mg/m²に減量.
DXRやVBLは静注も可. 各施設の運用方針による.

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

主な有害事象

N Engl J Med. 2018 Jan 25;378(4):331-344.¹⁾より引用

骨髄抑制

  • 好中球減少 (≧Grade3 39%)
  • 貧血 (≧Grade3 4%)

重大な有害事象

  • 嘔気 (56%)
  • 嘔吐 (28%)
  • 便秘 (37%)
  • 下痢 (18%)
  • 腹痛 (10%)
  • 倦怠感 (32%)
  • 食欲不振 (12%)
  • 末梢神経障害 (13%)
  • 感覚障害 (17%)
  • 口内炎 (16%)
  • 脱毛症 (22%)
  • 骨痛 (10%)
  • 関節痛 (12%)
  • 不眠症 (12%)
  • 発熱 (22%)
  • 咳嗽 (19%)
  • 頭痛 (14%)
  • ディスペプシア (11%)
  • 呼吸困難 (19%)
  • 筋肉痛 (11%)
  • 四肢痛 (10%)
  • 上気道感染 (11%)

特徴と注意点

ABVD療法

  • ABVD療法は未治療ホジキンリンパ腫に対する標準治療の一つ.
  • 限局期ホジキンリンパ腫:ABVD 4コース後に放射線治療.
  • 進行期ホジキンリンパ腫:ABVD 6 or 8コース (4・6コース後にCTで効果判定、 最初のCR判定から2コース追加、 最大8コース).

ABVd療法

  • ダカルバジンを2/3に減量した変法ダカルバジンの消化器毒性の軽減を目的として、 JCOG9305試験で検証された.²⁾
  • 有効性は同等で、 消化器症状は減少したと報告されているが、 ABVDとの直接比較試験はない.²⁾
  • 海外ではABVD療法 (ダカルバジンはfull-dose)が主流.
  • 制吐剤の進歩により消化器症状のコントロールが改善したことと、 投与施設や患者状態を考慮し選択を検討する.

副作用と対策

  • 腫瘍量が多い場合、 腫瘍崩壊症候群が出現するため、 十分な予防が必要.
  • ドキソルビシンには累積心毒性があるため、 累積上限量は500mg/m².
  • ドキソルビシン、 ビンブラスチンは壊死性抗がん剤であるため、 血管外漏出に注意.
  • ブレオマイシンは、 間質性肺炎・肺線維症などの肺障害のリスクがあり、 累積上限量は300mg.
  • 嘔気・嘔吐など消化器毒性が強いため、 NK1受容体拮抗薬を含めた制吐療法を考慮.

投与の際の注意点

  • ドキソルビシン、 ビンブラスチンは壊死性抗がん剤であるため、 血管外漏出に注意.
  • ダカルバジンは光分解物により血管痛を起こすため、 点滴経路全般を遮光して投与.

関連する臨床試験の結果

N Engl J Med.1992 Nov 19;327(21):1478-84.³⁾

概要

  • 進行期ホジキンリンパ腫に対する多施設共同ランダム化比較試験. 
  • MOPP療法、 ABVD療法、 MOPP-ABVD交替療法の三群間において、 完全奏効率、 無病生存率、 毒性を比較. 

結果

  • 完全奏効率:MOPP群 67%、 ABVD群 82%、 MOPP-ABVD群 83%. DXRを含む治療群で有意に高かった (p=0.006) . 
  • 完全奏効を示した患者の無病生存率は5年で66%であり、 治療法によって差は無かった.
  • 5年後の無病生存率:MOPP群 50%、 ABVD群 61%、 MOPP-ABVD群 65%. 各治療群で有意差が認められた (MOPP単独と他レジメン群との比較ではp= 0.02).
  • 全5年生存率:MOPP群 66%、 ABVD群 73%、 MOPP-ABVD群 75% (MOPP単独と他レジメン群との比較ではP = 0.28).
  • MOPP療法を含むレジメン群では、 好中球減少症は47~53%であり、 重篤なものは21~28%であったが、 ABVD単独ではそれぞれ18%と3%と有意に少なかった (P <0.001).
  • 重度の肺毒性はABVD療法を含むレジメン群に6%発生した. 

参考文献

  1. N Engl J Med. 2018 Jan 25;378(4):331-344.
  2. Int J Hematol. 2010 Dec;92(5):713-24.
  3. N Engl J Med.1992 Nov 19;327(21):1478-84.

最終更新:2022年8月19日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
レジメン(血液)

がん薬物療法における治療計画をまとめたものです。

主要論文や適正使用ガイドをもとにした用量調整プロトコール、 有害事象対応をご紹介します。

なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。

また、 一般の方への情報提供ではないことを予めご了承ください。