概要
計算
監修医師

診断基準

①及び②の特徴を備え、 さらに③の条件を満たせば特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断する。 
除外診断として、 血小板寿命の短縮が参考になることがある

①自覚症状・理学的所見

  • 出血症状あり。 紫斑 (点状出血及び斑状出血) が主で、 歯肉出血、 鼻出血、 下血、 血尿、 月経過多なども見られる。
  • 関節出血は通常認めない。
  • 出血症状は自覚していないが血小板減少を指摘され、 受診することもある。

②検査所見

(1)末梢血液 

  • 血小板減少
  • 血小板<10万/µL。 自動血球計数のときは偽血小板減少に留意。  
  • 赤血球及び白血球は数、 形態ともに正常、 ときに失血性または鉄欠乏性貧血を伴い、 また軽度の白血球増減を来すことがある。

(2)骨髄 

  • 骨髄巨核球数は正常ないし増加
  • 巨核球は血小板付着像を欠くものが多い。  
  • 赤芽球および顆粒球の両系統は数、 形態ともに正常
  • 顆粒球/赤芽球比 (M/E比) は正常で、 全体として正形成を呈する。

(3)免疫学的検査

  • 血小板結合性免疫グロブリンG (PAIgG) 増量、 ときに増量を認めないことがある。 
  • ITP以外の血小板減少症においても増加を示しうる。

③血小板減少を来たしうる各種疾患を否定できる

血小板減少を来す他の疾患 

薬剤または放射線障害、 再生不良性貧血、 骨髄異形成症候群、 発作性夜間血色素尿症、 全身性エリテマトーデス、 白血病、 悪性リンパ腫、 骨髄癌転移、 播種性血管内凝固症候群、 血栓性血小板減少性紫斑病、 脾機能亢進症、 巨赤芽球性貧血、 敗血症、 結核症、 サルコイドーシス、 血管腫など

感染症

・特に小児のウイルス性感染症
・ウイルス生ワクチン接種後に生じた血小板減少

先天性血小板減少症

・ベルナール・スーリエ (Bernard-Soulier) 症候群
・ウィスコット・オルドリッチ (Wiskott-Aldrich) 症候群
・メイ・ヘグリン (May-Hegglin) 症候群
・カサバッハ・メリット (Kasabach-Merritt) 症候群など

④診断

  • ①及び②の特徴を備え、 さらに③の条件を満たせば特発性血小板減少性紫斑病の診断を下す。
  • 除外診断に当たっては、 血小板寿命の短縮が参考になることがある。

⑤参考事項

1.症状及び所見 

A.出血症状 

「出血症状あり、 なし」及び「出血症状」は認定基準判断材料とはしない。  

B.末梢血所見

  • 「白血球形態異常あり」あるいは「赤血球形態異常あり」の場合は、 白血病、 骨髄異形成症候群 (MDS) 鑑別のため骨髄検査を求める。
  • 「白血球数」< 3,000/µL の場合あるいは ≧10,000/µLの場合は、 白血病や再生不良性貧血あるいは MDS 鑑別のため骨髄検査を求める。
  • 「MCV (平均赤血球容積) 」≧110 の場合は骨髄検査を求める。
  • 「血小板数」≦10 万/µL が ITP 認定のための絶対条件である。
  • 「白血球分画」で好中球 <30%あるいはリンパ球 ≧ 50%の場合は、 骨髄検査を求める。

C.その他、 参考となる検査所見 

ITP認定に必須の検査ではないが、 検査成績が不明又は未回答であっても認定可 (抗血小板自己抗体検査、 網状血小板比率、 トロンボポエチン値は、 いずれも保険適用外の検査であり、 多くの施設で実施は困難であるため) 

認定できる場合

  • 抗血小板自己抗体検査
  • 陽性の場合は、 ITP の可能性が非常に高い
  • 陰性の場合も ITPを否定できないので認定可
  • 網状血小板比率
  • 高値の場合は、 ITP の可能性が高い
  • 正常の場合も ITP を否定できないので認定可
  • トロンボポエチン値
  • 高値、 正常どちらであっても認定可
  • HBs 抗原、 抗 HCV 抗体
  • 陽性の場合、 鑑別診断の項で肝硬変を鑑別できるとしている場合は認定可
  • ヘリコバクタ・ピロリ菌
  • 陽性、 陰性いずれでも認定可
  • 骨髄検査
  • 検査手技などにより有核細胞数や巨核球数が低値となることがある
  • 有核細胞数や巨核球数が低値であっても ITP認定可

認定できない場合

  • 骨髄所見
  • 異型細胞が存在している場合
  • 骨髄染色体検査所見
  • MDSでしばしば認められる染色体異常 (5q-、 -7、 +8、 20q-) などを認めるとき
 

2. 鑑別診断 

鑑別診断の項で「鑑別できない」と記載されている時は、 ITPと認定できない。  

 

3. 現在までの治療 

「治療の有無」、 「実施した治療」は、 ITP 認定の判断材料とはしない。

重症度分類

指定難病申請は「StageII 以上」が対象
ITPの診断基準

関連コンテンツ

🔢 ITP重症度分類

📘 成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2019 改訂版

参考文献

  1. 厚生労働省. 「平成27年1月1日施行の指定難病 (告示番号1~110) 特発性血小板減少性紫斑病 概要・診断基準等」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000157747.docx (参照2023-3-6)
 
最終更新:2023年7月27日 
監修医師:HOKUTO編集部医師

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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ITPの診断基準

特発性血小板減少性紫斑病 (指定難病63)
2023年11月23日更新
概要
計算

診断基準

①及び②の特徴を備え、 さらに③の条件を満たせば特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断する。 
除外診断として、 血小板寿命の短縮が参考になることがある

①自覚症状・理学的所見

  • 出血症状あり。 紫斑 (点状出血及び斑状出血) が主で、 歯肉出血、 鼻出血、 下血、 血尿、 月経過多なども見られる。
  • 関節出血は通常認めない。
  • 出血症状は自覚していないが血小板減少を指摘され、 受診することもある。

②検査所見

(1)末梢血液 

  • 血小板減少
  • 血小板<10万/µL。 自動血球計数のときは偽血小板減少に留意。  
  • 赤血球及び白血球は数、 形態ともに正常、 ときに失血性または鉄欠乏性貧血を伴い、 また軽度の白血球増減を来すことがある。

(2)骨髄 

  • 骨髄巨核球数は正常ないし増加
  • 巨核球は血小板付着像を欠くものが多い。  
  • 赤芽球および顆粒球の両系統は数、 形態ともに正常
  • 顆粒球/赤芽球比 (M/E比) は正常で、 全体として正形成を呈する。

(3)免疫学的検査

  • 血小板結合性免疫グロブリンG (PAIgG) 増量、 ときに増量を認めないことがある。 
  • ITP以外の血小板減少症においても増加を示しうる。

③血小板減少を来たしうる各種疾患を否定できる

血小板減少を来す他の疾患 

薬剤または放射線障害、 再生不良性貧血、 骨髄異形成症候群、 発作性夜間血色素尿症、 全身性エリテマトーデス、 白血病、 悪性リンパ腫、 骨髄癌転移、 播種性血管内凝固症候群、 血栓性血小板減少性紫斑病、 脾機能亢進症、 巨赤芽球性貧血、 敗血症、 結核症、 サルコイドーシス、 血管腫など

感染症

・特に小児のウイルス性感染症
・ウイルス生ワクチン接種後に生じた血小板減少

先天性血小板減少症

・ベルナール・スーリエ (Bernard-Soulier) 症候群
・ウィスコット・オルドリッチ (Wiskott-Aldrich) 症候群
・メイ・ヘグリン (May-Hegglin) 症候群
・カサバッハ・メリット (Kasabach-Merritt) 症候群など

④診断

  • ①及び②の特徴を備え、 さらに③の条件を満たせば特発性血小板減少性紫斑病の診断を下す。
  • 除外診断に当たっては、 血小板寿命の短縮が参考になることがある。

⑤参考事項

1.症状及び所見 

A.出血症状 

「出血症状あり、 なし」及び「出血症状」は認定基準判断材料とはしない。  

B.末梢血所見

  • 「白血球形態異常あり」あるいは「赤血球形態異常あり」の場合は、 白血病、 骨髄異形成症候群 (MDS) 鑑別のため骨髄検査を求める。
  • 「白血球数」< 3,000/µL の場合あるいは ≧10,000/µLの場合は、 白血病や再生不良性貧血あるいは MDS 鑑別のため骨髄検査を求める。
  • 「MCV (平均赤血球容積) 」≧110 の場合は骨髄検査を求める。
  • 「血小板数」≦10 万/µL が ITP 認定のための絶対条件である。
  • 「白血球分画」で好中球 <30%あるいはリンパ球 ≧ 50%の場合は、 骨髄検査を求める。

C.その他、 参考となる検査所見 

ITP認定に必須の検査ではないが、 検査成績が不明又は未回答であっても認定可 (抗血小板自己抗体検査、 網状血小板比率、 トロンボポエチン値は、 いずれも保険適用外の検査であり、 多くの施設で実施は困難であるため) 

認定できる場合

  • 抗血小板自己抗体検査
  • 陽性の場合は、 ITP の可能性が非常に高い
  • 陰性の場合も ITPを否定できないので認定可
  • 網状血小板比率
  • 高値の場合は、 ITP の可能性が高い
  • 正常の場合も ITP を否定できないので認定可
  • トロンボポエチン値
  • 高値、 正常どちらであっても認定可
  • HBs 抗原、 抗 HCV 抗体
  • 陽性の場合、 鑑別診断の項で肝硬変を鑑別できるとしている場合は認定可
  • ヘリコバクタ・ピロリ菌
  • 陽性、 陰性いずれでも認定可
  • 骨髄検査
  • 検査手技などにより有核細胞数や巨核球数が低値となることがある
  • 有核細胞数や巨核球数が低値であっても ITP認定可

認定できない場合

  • 骨髄所見
  • 異型細胞が存在している場合
  • 骨髄染色体検査所見
  • MDSでしばしば認められる染色体異常 (5q-、 -7、 +8、 20q-) などを認めるとき
 

2. 鑑別診断 

鑑別診断の項で「鑑別できない」と記載されている時は、 ITPと認定できない。  

 

3. 現在までの治療 

「治療の有無」、 「実施した治療」は、 ITP 認定の判断材料とはしない。

重症度分類

指定難病申請は「StageII 以上」が対象
ITPの診断基準

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🔢 ITP重症度分類

📘 成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2019 改訂版

参考文献

  1. 厚生労働省. 「平成27年1月1日施行の指定難病 (告示番号1~110) 特発性血小板減少性紫斑病 概要・診断基準等」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000157747.docx (参照2023-3-6)
 
最終更新:2023年7月27日 
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