診療報酬改定、 本当に増収につながる?
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2ヶ月前

診療報酬改定、 本当に増収につながる?

診療報酬改定、 本当に増収につながる?
こんにちは、 Dr.Genjohです。 2024年度診療報酬改定について、 緊急シリーズ 「診療報酬改定から見る医療の今後」 をお届けします。 初回は診療科を限定せず、 医業全般を見ていきましょう。 
※本稿における(〇〇p)は、 厚生労働省令和6年度診療報酬改定の概要 (医科全体版) の該当ページです。

昇給の財源に不十分?

診療報酬改定、 本当に増収につながる?
図1 (厚生労働省の資料より)

診療報酬全体は+0.88%と微増になりました【図1】。 増額の大部分は医療従事者の賃上げに充当されることが見込まれており、 2024年は医療従事者2.5%、 2025年には2.0%のべースアップが求められます (11p)

昇給の財源として、 外来・在宅ではベースアップ評価料として初診6点、 再診2点、 入院では評価に応じて1~165点が加算されます (13p) 。 ただ、 開業医の現場の声としては昇給の財源としてこれでは不十分との声もあります。

医療DXに多くの加算

急性期病院・広報病院・診療所・訪問診療間の連携が推し進められていく前提として、 医療情報の共有システムに多くの加算が設定されています。

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図2 (厚労省の資料より)

マイナンバーカード受付、 電子処方箋、 電子カルテ情報共有、 在宅医療DX活用などにそれぞれ加算が設定されました (図2、37p) 。 ただ、 こちらも加算点数が導入・維持コストに見合っていないとの声が聞かれます。 今後の加算点数が医療DXを前提とするものに移行していく可能性を考慮し、 導入時期を慎重に判断する必要があるでしょう。

入院病床の変革

一言で言えば、 コストのかかる急性期病棟の病床数を絞り、 より低コストの慢性期病棟~施設~診療所・在宅へシフトさせていきたい意図が読み取れます (図3、106p)

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図3 (厚労省の資料より)

急性期一般病棟(看護必要度7 : 1を含む)と地域包括ケア病棟(看護必要度13:1)の間に地域包括医療病棟(看護必要度10 : 1)が新設されます。

急性期一般病棟の入院料は1,650~1,382点に対して地域包括医療病棟入院料は3,050点と高めですが、 後者は完全な包括評価です。

今後はこれまで以上に入院初日から低コスト診療を行う事を強く意識する必要が生じてくるでしょう。

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図4 (厚労省の資料より)

急性期病棟に対する締め付け強化

急性期から慢性期へ病棟シフトさせるための調整も進みます。 看護必要度7 : 1部分の急性期一般病棟の平均在院日数が18→16日に短縮され、 より早期に急性期を離床させるよう求められるようになります (112p)

また、 急性期一般病棟で算定するために必要な重症度・看護必要度の点数が厳しくなります。 褥瘡処置はカウントされなくなり、 手術後や3種以上の点滴でのカウントに日数制限が設けられるなど、 これまで急性期で算定出来ていた患者さんが算定しにくくなります (115P)

さらに大きな変革を求められるのはICUです。

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図5 (厚労省の資料より)

これまでは特定集中治療室管理料1・2と3・4の2段組でしたが、 今回5・6が追加され3段組となります。 ICU専任医師が常時勤務していれば1・2・3・4を算定出来ていましたが、 今後は一定以上のSOFAスコアを満たす患者が一定割合いないと、 点数の低い5・6の算定しか出来なくなります (図5、121p)

また1・2・3・4を算定するためには、 常時勤務するICU専任医師は宿日直医師を兼ねてはならないという条項が追加されました。

医師の働き方改革で日当直医師の確保に制限がかかる2024年、 同時に行う診療報酬改定としてはあまりに厳しいと筆者は感じますが、 それほどまでにICU機能を備える施設の集約化を行いたい意図があるのでしょうか。

手厚くなる慢性期

診療報酬改定、 本当に増収につながる?

急性期病棟の条件が厳しくなることに反し、 慢性期領域はむしろ手厚くなります。 回復期リハビリテーション病棟入院料は上昇し (131p) 、 地域包括ケア病棟入院料も上昇します (137p)

その地域包括ケア病棟においても、 これまでは入院日数を問わず一定額だった入院管理料が入院41日以降から減額されるように変更されました (136p) ローコストである地域包括ケア病棟すらも退院を推進し、 さらにローコストな施設・在宅へシフトさせたい意向が読み取れます。

DPC区分

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図6 (厚労省の資料より)

DPCシステムは、 入院早期の一日当たりの入院料は高めに設定されており、 入院が長引くほど一日当たりの入院料が低くなっていくため、 早期退院が促されるように出来ています。

今回の改定で疾患ごとに標準的な入院日数が定められ、 入院後の点数設定方式がA~Eの5パターンに分割されました (図6、161p)疾患ごとの標準入院期間を超えた場合には、 これまで以上に入院料が減ずると考えられますので、 入院期間がオーバーしないようにスピーディーな治療が求められます。

今後の救急患者への対応

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図7 (厚労省の資料より)

働き方改革のスタートで、 二次救急医療機関において夜間・休日の救急車受け入れ体制の維持は今後難しくなっていくと考えられています。 今後はマンパワーのある三次救急医療機関が時間外救急車の多くを受け入れる流れになりますが、 高度な治療が必要ではない中等症患者が三次救急医療機関にたまっていく懸念があります。

これを防ぐため、 二次救急医療機関でも継続治療が可能と判断された症例に関しては、 三次救急医療機関から二次救急医療機関への 「下り搬送」 が今後活用されるようになります (図7、249p)

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図8 (厚労省の資料より)

「下り搬送」 を行った場合、 救急患者連携搬送料が加算できるようになります。 入院させず、 救急外来からそのまま下り搬送した場合が最も高い1,800点を加算でき、 搬送までに時間がかかるほど加算額が減少していきます。 早期の下り搬送を行い、 三次救急医療機関の入院治療の負荷軽減を図りたいのです (図8、248p)

増収につながるか疑問

今回は2024年度診療報酬改定の医業全般について概要をご紹介しました。 マスメディアで初診料や再診料の値上げが声高に叫ばれる中、 急性期医療への締め付け、 早期退院への圧力が大きく、 実際に増収につながるかは疑問を感じざるを得ません。

筆者プロフィール

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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