概要
監修医師
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

*中外製薬の外部サイトへ遷移します

用法用量

APT試験¹⁾より抜粋

12週投与後、 トラスツズマブ(週1回2mg/kgまたは3週に1回6mg/kg)を40週間投与

パクリタクセルの用法が添付文書上では異なる。 添付文書では、 「1日1回210mg/m2(体表面積)を3時間かけて点滴静注し、 少なくとも3週間休薬」もしくは「1日1回100mg/m²を1時間かけて点滴静注し、 週1回投与を6週連続し、 少なくとも2週間休薬」と記載あり
トラスツズマブの用法は添付文書では、 上記用法以外に「3週間間隔、 初回投与時には8mg/kgを、 2回目以降は6mg/kg」の記載もある。

前投薬

パクリタキセルによる過敏症予防を目的としてデキサメタゾン*、 抗ヒスタミン薬 (ジフェンヒドラミン50mg内服、 またはd-クロルフェニラミン5mg静注) 、 H2受容体拮抗薬を投与する。

*デキサメタゾンは初回投与時は6.6mgとし、 次回以降は3.3mgに減量してもよい。

投与開始基準

APT試験¹⁾より抜粋

18歳以上で、 HER2陽性乳癌と診断されたPS0、 1の患者

特徴と注意点

  • HER2陽性転移再発乳癌²⁾、 およびHER2陽性早期乳癌¹⁾に対して使用されるレジメンである。
  • パクリタキセルおよびトラスツズマブは、 毎週投与と3週毎投与する方法があるが、 APT試験²⁾のように、 パクリタキセルを毎週およびトラスツズマブを3週毎に投与することが多い。
  • HER2陽性早期乳癌では、 トラスツズマブ+パクリタキセル併用を4コース投与後に、 トラスツズマブ単独治療を計1年間投与する。
  • トラスツズマブの添付文書における投与方法は以下の2種である。
  • A法:初回4mg/kg、 2回目以降2mg/kgを1週間間隔で投与する。
  • B法:初回8mg/kg、 2回目以降6mg/kgを3週間間隔で投与する。
  • 投与開始前に心機能検査 (心エコー等) を必ず実施し、 左室駆出率 (LVEF) を含む心機能を確認する。
  • パクリタキセル製剤にはアルコールが含まれ、 weeklyレジメンはおおよそビール200mLに相当するため、 投与前にアルコール過敏の有無について確認する。
  • パクリタキセル製剤および溶解補助剤のポリオキシエチレンヒマシ油による過敏症予防のために、 ステロイドおよび抗アレルギー薬の前投薬を行う。

関連する臨床試験①|APT試験¹⁾

腫瘍径の小さなHER2陽性乳癌患者において、 トラスツズマブ+パクリタキセルによる術後療法の効果を検証した単群コホートの第Ⅱ相試験APTの結果より、 長期予後が良好であることが示された。

>>臨床試験の詳細を見る

DFS率

  • 3年時 : 98.7%
(95%CI 97.6-99.8%)
  • 7年時 : 93.3%
(95%CI 90.4-96.2%)
ホルモン受容体陽性患者 94.6%、 陰性患者 90.7%
  • 10年時 : 91.3%
(95%CI 88.3-94.4%)

RFI率

  • 3年時 : 99.2%
(95%CI 98.4-100%)
  • 7年時 : 97.5%
(95%CI 95.9-99.1%)
  • 10年時 : 96.3%
(95%CI 94.3-98.3%)

BCSS率

  • 7年時 : 98.6%
(95%CI 97.0-100%)
  • 10年時 : 98.8%
(95%CI 97.6–100%)

OS率

  • 7年時 : 95.0%
(95%CI 92.4-97.7%)
  • 10年時 : 94.3%
(95%CI 91.8-96.8%)

関連する臨床試験②|H0648g試験²⁾

HER2を過剰発現する進行性転移性乳癌に対し、 従来の化学療法へのトラスツズマブ上乗せ効果を化学療法単独を対照に検証した第III相ランダム化比較試験H0648gの結果より、 無増悪期間 (TTP) に対する有効性が示された。

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TTP中央値

  • トラスツズマブ+chemo群:7.4ヵ月
  • chemo単独群:4.6ヵ月
RR 0.51 (95%CI 0.41-0.63)、 p<0.001

シクロホスファミド投与集団

  • トラスツズマブ+chemo群:7.8ヵ月
  • chemo単独群:6.1ヵ月
RR 0.62 (95%CI 0.47-0.81)、 p<0.001

パクリタキセル投与集団

  • トラスツズマブ+chemo群:6.9ヵ月
  • chemo単独群:3.0ヵ月
RR 0.38 (95%CI 0.27-0.53)、 p<0.001

ORR

  • トラスツズマブ+chemo群:50%
  • chemo単独群:32%
p<0.001

奏効期間 (中央値)

  • トラスツズマブ+chemo群:9.1ヵ月
  • chemo単独群:6.1ヵ月
p<0.001

TTF中央値

  • トラスツズマブ+chemo群:6.9ヵ月
  • chemo単独群:4.5ヵ月
RR 0.58 (95%CI 0.47-0.70)、 p<0.001

OS中央値

  • トラスツズマブ+chemo群:25.1ヵ月
  • chemo単独群:20.3ヵ月
RR 0.80 (95%CI 0.64-1.00)、 p=0.046

chemo単独群では、 病勢進行後にトラスツズマブの非盲検投与を受けた患者も含まれた。

OSのサブグループ解析

IHCが3+の患者は、 2+の患者よりもトラスツズマブによる効果が大きかった。

参考文献

  1. Adjuvant paclitaxel and trastuzumab for node-negative, HER2-positive breast cancer: final 10-year analysis of the open-label, single-arm, phase 2 APT trial. Lancet Oncol. 2023 Mar;24(3):273-285. PMID: 36858723
  2. Use of chemotherapy plus a monoclonal antibody against HER2 for metastatic breast cancer that overexpresses HER2. N Engl J Med. 2001 Mar 15;344(11):783-92. PMID: 11248153
最終更新日:2024年1月29日
監修医師:HOKUTO編集部監修医師
執筆:NTT東日本関東病院 薬剤部 兼平 暖先生

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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トラスツズマブ (ハーセプチン®)+パクリタキセル (タキソール®)
2024年03月06日更新
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

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用法用量

APT試験¹⁾より抜粋

12週投与後、 トラスツズマブ(週1回2mg/kgまたは3週に1回6mg/kg)を40週間投与

パクリタクセルの用法が添付文書上では異なる。 添付文書では、 「1日1回210mg/m2(体表面積)を3時間かけて点滴静注し、 少なくとも3週間休薬」もしくは「1日1回100mg/m²を1時間かけて点滴静注し、 週1回投与を6週連続し、 少なくとも2週間休薬」と記載あり
トラスツズマブの用法は添付文書では、 上記用法以外に「3週間間隔、 初回投与時には8mg/kgを、 2回目以降は6mg/kg」の記載もある。

前投薬

パクリタキセルによる過敏症予防を目的としてデキサメタゾン*、 抗ヒスタミン薬 (ジフェンヒドラミン50mg内服、 またはd-クロルフェニラミン5mg静注) 、 H2受容体拮抗薬を投与する。

*デキサメタゾンは初回投与時は6.6mgとし、 次回以降は3.3mgに減量してもよい。

投与開始基準

APT試験¹⁾より抜粋

18歳以上で、 HER2陽性乳癌と診断されたPS0、 1の患者

特徴と注意点

  • HER2陽性転移再発乳癌²⁾、 およびHER2陽性早期乳癌¹⁾に対して使用されるレジメンである。
  • パクリタキセルおよびトラスツズマブは、 毎週投与と3週毎投与する方法があるが、 APT試験²⁾のように、 パクリタキセルを毎週およびトラスツズマブを3週毎に投与することが多い。
  • HER2陽性早期乳癌では、 トラスツズマブ+パクリタキセル併用を4コース投与後に、 トラスツズマブ単独治療を計1年間投与する。
  • トラスツズマブの添付文書における投与方法は以下の2種である。
  • A法:初回4mg/kg、 2回目以降2mg/kgを1週間間隔で投与する。
  • B法:初回8mg/kg、 2回目以降6mg/kgを3週間間隔で投与する。
  • 投与開始前に心機能検査 (心エコー等) を必ず実施し、 左室駆出率 (LVEF) を含む心機能を確認する。
  • パクリタキセル製剤にはアルコールが含まれ、 weeklyレジメンはおおよそビール200mLに相当するため、 投与前にアルコール過敏の有無について確認する。
  • パクリタキセル製剤および溶解補助剤のポリオキシエチレンヒマシ油による過敏症予防のために、 ステロイドおよび抗アレルギー薬の前投薬を行う。

関連する臨床試験①|APT試験¹⁾

腫瘍径の小さなHER2陽性乳癌患者において、 トラスツズマブ+パクリタキセルによる術後療法の効果を検証した単群コホートの第Ⅱ相試験APTの結果より、 長期予後が良好であることが示された。

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DFS率

  • 3年時 : 98.7%
(95%CI 97.6-99.8%)
  • 7年時 : 93.3%
(95%CI 90.4-96.2%)
ホルモン受容体陽性患者 94.6%、 陰性患者 90.7%
  • 10年時 : 91.3%
(95%CI 88.3-94.4%)

RFI率

  • 3年時 : 99.2%
(95%CI 98.4-100%)
  • 7年時 : 97.5%
(95%CI 95.9-99.1%)
  • 10年時 : 96.3%
(95%CI 94.3-98.3%)

BCSS率

  • 7年時 : 98.6%
(95%CI 97.0-100%)
  • 10年時 : 98.8%
(95%CI 97.6–100%)

OS率

  • 7年時 : 95.0%
(95%CI 92.4-97.7%)
  • 10年時 : 94.3%
(95%CI 91.8-96.8%)

関連する臨床試験②|H0648g試験²⁾

HER2を過剰発現する進行性転移性乳癌に対し、 従来の化学療法へのトラスツズマブ上乗せ効果を化学療法単独を対照に検証した第III相ランダム化比較試験H0648gの結果より、 無増悪期間 (TTP) に対する有効性が示された。

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TTP中央値

  • トラスツズマブ+chemo群:7.4ヵ月
  • chemo単独群:4.6ヵ月
RR 0.51 (95%CI 0.41-0.63)、 p<0.001

シクロホスファミド投与集団

  • トラスツズマブ+chemo群:7.8ヵ月
  • chemo単独群:6.1ヵ月
RR 0.62 (95%CI 0.47-0.81)、 p<0.001

パクリタキセル投与集団

  • トラスツズマブ+chemo群:6.9ヵ月
  • chemo単独群:3.0ヵ月
RR 0.38 (95%CI 0.27-0.53)、 p<0.001

ORR

  • トラスツズマブ+chemo群:50%
  • chemo単独群:32%
p<0.001

奏効期間 (中央値)

  • トラスツズマブ+chemo群:9.1ヵ月
  • chemo単独群:6.1ヵ月
p<0.001

TTF中央値

  • トラスツズマブ+chemo群:6.9ヵ月
  • chemo単独群:4.5ヵ月
RR 0.58 (95%CI 0.47-0.70)、 p<0.001

OS中央値

  • トラスツズマブ+chemo群:25.1ヵ月
  • chemo単独群:20.3ヵ月
RR 0.80 (95%CI 0.64-1.00)、 p=0.046

chemo単独群では、 病勢進行後にトラスツズマブの非盲検投与を受けた患者も含まれた。

OSのサブグループ解析

IHCが3+の患者は、 2+の患者よりもトラスツズマブによる効果が大きかった。

参考文献

  1. Adjuvant paclitaxel and trastuzumab for node-negative, HER2-positive breast cancer: final 10-year analysis of the open-label, single-arm, phase 2 APT trial. Lancet Oncol. 2023 Mar;24(3):273-285. PMID: 36858723
  2. Use of chemotherapy plus a monoclonal antibody against HER2 for metastatic breast cancer that overexpresses HER2. N Engl J Med. 2001 Mar 15;344(11):783-92. PMID: 11248153
最終更新日:2024年1月29日
監修医師:HOKUTO編集部監修医師
執筆:NTT東日本関東病院 薬剤部 兼平 暖先生

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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