治療スケジュール
概要
監修医師

Liso-cel:リソカブタゲン マラルユーセル(ブレヤンジ®)

投与量コース投与日
CAR T細胞 総数100×10⁶個Day 1

前投薬

Infusion reaction軽減のため、 投与約30-60分前に抗ヒスタミン薬とアセトアミノフェンを投与.

その他

CAR-T発現生T細胞としてCD8陽性細胞 (20×10⁶~50×10⁶個) 及びCD4陽性細胞 (20×10⁶~50×10⁶個)を、 合計細胞数が体重を問わず100×10⁶個を目標に投与.
製造販売業者による説明を受けた医師のもとで実施する.
投与の2日前から7日前までにリンパ球除去化学療法を行う.
サイトカイン放出症候群の緊急時に備えて、 トシリズマブの在庫を確保する.
CD8陽性細胞を投与した後にCD4陽性細胞を投与.
レジメン
Liso-cel (Lisocabtagen maraleucel)
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

*適正使用ガイドは「ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾より引用

骨髄抑制

  • 好中球減少 (≧Grade3 80%)
  • 貧血 (≧Grade3 49%)
  • リンパ球減少 (≧Grade3 25%)
  • 血小板減少 (≧Grade3 49%)
  • 発熱性好中球減少症 (≧Grade3 12%)

主な有害事象

  • サイトカイン放出症候群 (49%、 ≧Grade3 1%)
  • 神経系事象 (12%、 ≧Grade3 4%)

特徴と注意点

作用機序

  • 白血球アフェレーシス産物から選別したCD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞に、 遺伝子組換えレンチウイルスベクターを用いてCD19を標的とするキメラ抗原受容体 (Chimeric Antigen Receptor;CAR) をコードする遺伝子を導入した再生医療等製品である.
  • CD19を発現したがん細胞をCAR発現生T細胞が認識すると、 導入T細胞の増殖、 活性化及び増殖、 炎症サイトカインの放出、 並びに標的細胞に対する細胞障害作用を誘導し、 CD19陽性のB細胞性腫瘍に対し抗腫瘍効果を示すと考えられている.

適応疾患

  • 再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫
  • 再発又は難治性の濾胞性リンパ腫 (follicular lymphoma: FL)

適格基準

  • 再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫
  • 再発又は難治性のFL (十分な経験を有する病理医によりGrade 3Bと診断されたFL)
  • CD19抗原を標的としたCAR-T療法の治療歴がない患者とし、 自家末梢血幹細胞移植適応の是非は問わない.

白血球アフェレーシス

  • 十分量のTリンパ球を含む非動員末梢血単核球を採取する.

リンパ球除去化学療法前の抗腫瘍療法 (ブリッジング療法)

  • 白血球アフェレーシス後からリンパ球除去化学療法の開始前までの病勢コントロールを目的に、 腫瘍量等に応じて抗腫瘍療法 (ブリッジング療法) を実施する.

TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾ におけるブリッジング療法》

  • 63.0%がブリッジング療法を実施
  • 多剤併用レジメン:DHAP療法、 ICE療法、 GDP療法 (リツキシマブ併用)

リンパ球除去化学療法

  • CAR発現生T細胞の生着及び増殖・活性化のため必須である.
  • 臨床試験では十分な有効性を期待するため、 白血球数及びリンパ球数の値にかかわらず、 リンパ球除去療法が実施された.
  • Liso-cel投与の2日前から7日前までに実施する.
  • シクロホスファミド 300mg/m²+フルダラビン 30mg/m²を3日間.

投与時の注意事項

  • B型又はC型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者、 HIVの感染者は、 ウイルスが再活性化又は増加する可能性がある.
  • Liso-cel輸送容器と出荷証明書の患者識別情報が患者と一致しているかを確認する.
  • 解凍時に、 外箱及び全てのバイアルの患者識別情報が患者と一致しているかを確認する.
  • CD8陽性細胞及びCD4陽性細胞の2種のバイアルを同時に解凍する.
  • Infusion reaction軽減のため、 Liso-cel投与の約30~60分前にアセトアミノフェン及び抗ヒスタミン薬を投与する.
  • 生命を脅かす緊急事態を除き、 副腎皮質ステロイド薬は使用しない.
  • サイトカイン放出症候群 (CRS) の緊急時に備え、 2回分以上トシリズマブを準備する.
  • 凍結保存条件下からバイアルを取り出してから2時間以内に投与を完了する.
  • CD8陽性細胞から投与するため、 CD8陽性細胞のシリンジから先に調製する. CD8陽性細胞を静脈内投与した後にCD4陽性細胞を静脈内投与する.
  • 白血球除去フィルターは使用しない.
  • 0.5mL/minの速度で静脈内投与する.
  • HIV-1を基に開発されたレンチウイルスベクターを使用しているためHIV核酸増幅検査で偽陽性になることがある.
  • 移植のために血液、 臓器、 組織及び細胞を提供しないよう指導する.
  • 悪性腫瘍の発現が報告されているため、 投与後は長期間経過を観察する.
  • Liso-cel投与後に抗EGFRモノクローナル抗体を投与するとLiso-celの抗腫瘍効果が減弱する可能性があるため併用注意. Liso-celは生物活性を惹起しない部分型ヒト上皮増殖因子受容体 (EGFRt) を細胞表面上でCD19特異的CARと共発現しているため、抗EGFRモノクローナル抗体によりLiso-celが除去されるおそれがある.

副作用と対策【サイトカイン放出症候群;CRS】

  • 大量のリンパ球 (T細胞、 B細胞、 ナチュラルキラー細胞等) や骨髄系細胞 (マクロファージ、 樹状細胞、 単球等) が活性化され、 炎症性サイトカインを放出することにより引き起こされる全身性炎症反応.
  • 体内でのCAR発現生T細胞の増殖、 活性化及び腫瘍細胞の死滅の結果発現する.
  • Tisa-cel投与後1週間は患者の状態に注意し、少なくとも4週間は観察を継続する.
  • 症状:高熱、 悪寒、 筋肉痛、 関節痛、 悪心、 嘔吐、 下痢、 発汗、 発疹、 食欲不振、 疲労、 頭痛、 低血圧、 呼吸困難、 呼吸不全、 肺水腫、 頻呼吸、 低酸素症、 凝固障害、 心不全、 不整脈、 腎不全、 肝障害、 播種性血管内凝固症候群、 毛細血管漏出症候群、 血球貪食症候群、 マクロファージ活性化症候群、 急性呼吸窮迫症候群等.
  • CRS発現時期中央値 (範囲):5.0 (1-63) 日 (TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾ ).
  • CRS持続期間中央値 (範囲):4 (1-16) 日 (TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾ ).

《ブレヤンジ®点滴静注サイトカイン放出症候群管理アルゴリズム》

TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾ におけるCRS治療》

  • トシリズマブ投与:22.5% (1回投与:12.4%、 2回投与:3.4%、 3回投与:3.4%、 4回投与:3.4%).
  • トシリズマブ+副腎皮質ステロイド:12.4%.

副作用と対策【神経系事象】

  • 発現メカニズムは不明. 多くは一過性であり、 ほとんどが支持療法もしくは治療を要せず症状が消失.
  • Liso-cel投与後一定期間は自動車の運転及び危険を伴う行動に従事しないよう指導する.
  • 症状:脳症、 せん妄、 不安、 浮動性めまい、 振戦、 意識障害、 失見当識、 頭痛、 錯乱、 激越、 痙攣発作、 無言症、 失語症等.
  • 神経系事象発現時期中央値 (範囲):11.0 (7-25) 日 (TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾ ).
  • 神経系事象持続期間中央値 (範囲):6.5 (1-30) 日 (TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾ ).

《ブレヤンジ®点滴静注神経系事象管理アルゴリズム》

副作用と対策【感染症】

  • 低γグロブリン血症又は無γグロブリン血症や重篤な遷延する血球減少に伴い、 細菌、 真菌、 ウイルス等による重度の感染症や発熱性好中球減少症が現れることがある.
  • 患者の易感染状態に応じた標準的な感染予防療法を実施する.

副作用と対策【低γグロブリン血症】

  • 正常なB細胞にもCD19が発現しているため、 一時的又は持続的にB細胞の枯渇が引き起こされ、 低γグロブリン血症を発症することがある.
  • 定期的に免疫グロブリンを測定し、 必要に応じて免疫補充療法を実施する.

副作用と対策【血球減少・造血器疾患】

  • Liso-cel投与後数週間以上にわたり、 血小板減少、 好中球減少、 貧血等の骨髄抑制が現れることがある.
  • 感染症の合併が見られた場合には血液製剤、 骨髄増殖因子 (G-CSF等) 、 抗菌薬等の投与を実施する.

関連する臨床試験の結果

TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾

概要

  • 無作為化非盲検並行群間比較国際共同第III相試験.
  • Liso-cel群と標準治療 (救援化学免疫療法及び自家造血幹細胞移植併用大量化学療法) 群の有効性及び安全性を比較.
  • 対象:アントラサイクリン系薬剤及びCD20標的薬を含む一時治療後に再発又は難治性の自家造血幹細胞移植適応のアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者. 続発性中枢神経系リンパ腫を有する患者は組み入れ可能.
  • 対象患者:WHO分類 (2016年) に基づくDLBCL非特定型 (de novo又は形質転換低悪性度非ホジキンリンパ腫)、 DLBCLの形態を示すMYC及びBCL2とBCL6の両方か一方の再構成を伴う高悪性度B細胞リンパ腫、 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 (PMBCL)、 T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、 Grade 3BのFL.
  • 投与量:CAR T細胞 総数100×10⁶個.

結果

  • 追跡期間中央値:6.2ヵ月 (IQR 4.4-11.5).
  • 無イベント生存期間中央値:Liso-cel群 10.1ヵ月 (95%CI 6.1-未達) vs 標準治療群 2.3ヵ月 (95%CI 2.2-4.3)、 (HR 0.35、 95%CI 0.23-0.53、 p<0.001).
  • 完全奏効率:Liso-cel群 66% (95%CI 56-76) vs 標準治療群 39% (95%CI 29-50)、 (p<0.001).
  • 部分奏効率:Liso-cel群 20% vs 標準治療群 9% .
  • 無増悪生存期間中央値:Liso-cel群 14.8ヵ月 (95%CI 6.6-未達) vs 標準治療群 5.7ヵ月 (95%CI 3.9-9.4)、 (HR 0.41、 95%CI 0.25-0.66、 p<0.001).
  • 全生存期間中央値:Liso-cel群 未達 (95%CI 15.8-未達) vs 標準治療群 16.4ヵ月 (95%CI 11.0-未達)、 (HR 0.51、 95%CI 0.26-1.00、 p=0.026).
  • 奏効期間期間:Liso-cel群 未達 (95%CI 6.8-未達) vs 標準治療群 14.5ヵ月 (95%CI 4.7-未達)、 (HR 0.65、 95%CI 0.30-1.43).
  • 6ヵ月時点の奏効維持率:Liso-cel群 71.0% (95%CI 56.1-86.0) vs 標準治療群 65.9% (95%CI 47.2-84.5).
  • 12ヵ月時点の奏効維持率:Liso-cel群 62.1% (95%CI 44.6-79.6) vs 標準治療群 54.7% (95%CI 33.7-75.7).

PILOT試験 (017006試験)²⁾

概要

  • 非盲検非対象海外共同第II相試験.
  • 対象:アントラサイクリン系薬剤及びCD20標的薬を含む一時治療後に再発又は難治性の自家造血幹細胞移植非適応のアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者. 続発性中枢神経系リンパ腫を有する患者は組み入れ可能.
  • 対象患者:WHO分類 (2016年) に基づくDLBCL非特定型 (de novo又は形質転換FL)、 DLBCLの形態を示すMYC及びBCL2とBCL6の両方か一方の再構成を伴う高悪性度B細胞リンパ腫、 T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、 Grade 3BのFL.
  • 投与量:CAR T細胞 総数100×10⁶個.

結果

  • 追跡期間中央値:12.3ヵ月 (IQR 6.1-11.5).
  • 奏効率 (完全奏効+部分奏効):80% (95%CI 68-89、 p<0.0001).
  • 完全奏効率:54% (95%CI 41-67).
  • 部分奏効率:26% (95%CI 16-39).
  • 無増悪生存期間中央値 (追跡期間中央値13.0ヵ月 (IQR 9.5-18.1)):9.03ヵ月 (95%CI 4.17-未達).
  • 無イベント生存期間中央値 (追跡期間中央値16.4ヵ月 (IQR 12.0-18.3)):7.23ヵ月 (95%CI 3.22-22.60).
  • 全生存期間中央値 (追跡期間中央値17.6ヵ月 (IQR 11.2-20.4)):未達 (95%CI 17.28-未達).

参考文献

  1. Lancet. 2022 Jun 18;399(10343):2294-2308.
  2. Lancet Oncol. 2022 Aug;23(8):1066-1077.

最終更新:2023年6月25日
監修医師:HOKUTO編集部医師

レジメン
Liso-cel (Lisocabtagen maraleucel)
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HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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Liso-cel (Lisocabtagen maraleucel)
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ブレヤンジ®:CD19-CAR-T
2023年07月02日更新

Liso-cel:リソカブタゲン マラルユーセル(ブレヤンジ®)

投与量コース投与日
CAR T細胞 総数100×10⁶個Day 1

前投薬

Infusion reaction軽減のため、 投与約30-60分前に抗ヒスタミン薬とアセトアミノフェンを投与.

その他

CAR-T発現生T細胞としてCD8陽性細胞 (20×10⁶~50×10⁶個) 及びCD4陽性細胞 (20×10⁶~50×10⁶個)を、 合計細胞数が体重を問わず100×10⁶個を目標に投与.
製造販売業者による説明を受けた医師のもとで実施する.
投与の2日前から7日前までにリンパ球除去化学療法を行う.
サイトカイン放出症候群の緊急時に備えて、 トシリズマブの在庫を確保する.
CD8陽性細胞を投与した後にCD4陽性細胞を投与.

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

*適正使用ガイドは「ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾より引用

骨髄抑制

  • 好中球減少 (≧Grade3 80%)
  • 貧血 (≧Grade3 49%)
  • リンパ球減少 (≧Grade3 25%)
  • 血小板減少 (≧Grade3 49%)
  • 発熱性好中球減少症 (≧Grade3 12%)

主な有害事象

  • サイトカイン放出症候群 (49%、 ≧Grade3 1%)
  • 神経系事象 (12%、 ≧Grade3 4%)

特徴と注意点

作用機序

  • 白血球アフェレーシス産物から選別したCD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞に、 遺伝子組換えレンチウイルスベクターを用いてCD19を標的とするキメラ抗原受容体 (Chimeric Antigen Receptor;CAR) をコードする遺伝子を導入した再生医療等製品である.
  • CD19を発現したがん細胞をCAR発現生T細胞が認識すると、 導入T細胞の増殖、 活性化及び増殖、 炎症サイトカインの放出、 並びに標的細胞に対する細胞障害作用を誘導し、 CD19陽性のB細胞性腫瘍に対し抗腫瘍効果を示すと考えられている.

適応疾患

  • 再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫
  • 再発又は難治性の濾胞性リンパ腫 (follicular lymphoma: FL)

適格基準

  • 再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫
  • 再発又は難治性のFL (十分な経験を有する病理医によりGrade 3Bと診断されたFL)
  • CD19抗原を標的としたCAR-T療法の治療歴がない患者とし、 自家末梢血幹細胞移植適応の是非は問わない.

白血球アフェレーシス

  • 十分量のTリンパ球を含む非動員末梢血単核球を採取する.

リンパ球除去化学療法前の抗腫瘍療法 (ブリッジング療法)

  • 白血球アフェレーシス後からリンパ球除去化学療法の開始前までの病勢コントロールを目的に、 腫瘍量等に応じて抗腫瘍療法 (ブリッジング療法) を実施する.

TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾ におけるブリッジング療法》

  • 63.0%がブリッジング療法を実施
  • 多剤併用レジメン:DHAP療法、 ICE療法、 GDP療法 (リツキシマブ併用)

リンパ球除去化学療法

  • CAR発現生T細胞の生着及び増殖・活性化のため必須である.
  • 臨床試験では十分な有効性を期待するため、 白血球数及びリンパ球数の値にかかわらず、 リンパ球除去療法が実施された.
  • Liso-cel投与の2日前から7日前までに実施する.
  • シクロホスファミド 300mg/m²+フルダラビン 30mg/m²を3日間.

投与時の注意事項

  • B型又はC型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者、 HIVの感染者は、 ウイルスが再活性化又は増加する可能性がある.
  • Liso-cel輸送容器と出荷証明書の患者識別情報が患者と一致しているかを確認する.
  • 解凍時に、 外箱及び全てのバイアルの患者識別情報が患者と一致しているかを確認する.
  • CD8陽性細胞及びCD4陽性細胞の2種のバイアルを同時に解凍する.
  • Infusion reaction軽減のため、 Liso-cel投与の約30~60分前にアセトアミノフェン及び抗ヒスタミン薬を投与する.
  • 生命を脅かす緊急事態を除き、 副腎皮質ステロイド薬は使用しない.
  • サイトカイン放出症候群 (CRS) の緊急時に備え、 2回分以上トシリズマブを準備する.
  • 凍結保存条件下からバイアルを取り出してから2時間以内に投与を完了する.
  • CD8陽性細胞から投与するため、 CD8陽性細胞のシリンジから先に調製する. CD8陽性細胞を静脈内投与した後にCD4陽性細胞を静脈内投与する.
  • 白血球除去フィルターは使用しない.
  • 0.5mL/minの速度で静脈内投与する.
  • HIV-1を基に開発されたレンチウイルスベクターを使用しているためHIV核酸増幅検査で偽陽性になることがある.
  • 移植のために血液、 臓器、 組織及び細胞を提供しないよう指導する.
  • 悪性腫瘍の発現が報告されているため、 投与後は長期間経過を観察する.
  • Liso-cel投与後に抗EGFRモノクローナル抗体を投与するとLiso-celの抗腫瘍効果が減弱する可能性があるため併用注意. Liso-celは生物活性を惹起しない部分型ヒト上皮増殖因子受容体 (EGFRt) を細胞表面上でCD19特異的CARと共発現しているため、抗EGFRモノクローナル抗体によりLiso-celが除去されるおそれがある.

副作用と対策【サイトカイン放出症候群;CRS】

  • 大量のリンパ球 (T細胞、 B細胞、 ナチュラルキラー細胞等) や骨髄系細胞 (マクロファージ、 樹状細胞、 単球等) が活性化され、 炎症性サイトカインを放出することにより引き起こされる全身性炎症反応.
  • 体内でのCAR発現生T細胞の増殖、 活性化及び腫瘍細胞の死滅の結果発現する.
  • Tisa-cel投与後1週間は患者の状態に注意し、少なくとも4週間は観察を継続する.
  • 症状:高熱、 悪寒、 筋肉痛、 関節痛、 悪心、 嘔吐、 下痢、 発汗、 発疹、 食欲不振、 疲労、 頭痛、 低血圧、 呼吸困難、 呼吸不全、 肺水腫、 頻呼吸、 低酸素症、 凝固障害、 心不全、 不整脈、 腎不全、 肝障害、 播種性血管内凝固症候群、 毛細血管漏出症候群、 血球貪食症候群、 マクロファージ活性化症候群、 急性呼吸窮迫症候群等.
  • CRS発現時期中央値 (範囲):5.0 (1-63) 日 (TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾ ).
  • CRS持続期間中央値 (範囲):4 (1-16) 日 (TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾ ).

《ブレヤンジ®点滴静注サイトカイン放出症候群管理アルゴリズム》

TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾ におけるCRS治療》

  • トシリズマブ投与:22.5% (1回投与:12.4%、 2回投与:3.4%、 3回投与:3.4%、 4回投与:3.4%).
  • トシリズマブ+副腎皮質ステロイド:12.4%.

副作用と対策【神経系事象】

  • 発現メカニズムは不明. 多くは一過性であり、 ほとんどが支持療法もしくは治療を要せず症状が消失.
  • Liso-cel投与後一定期間は自動車の運転及び危険を伴う行動に従事しないよう指導する.
  • 症状:脳症、 せん妄、 不安、 浮動性めまい、 振戦、 意識障害、 失見当識、 頭痛、 錯乱、 激越、 痙攣発作、 無言症、 失語症等.
  • 神経系事象発現時期中央値 (範囲):11.0 (7-25) 日 (TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾ ).
  • 神経系事象持続期間中央値 (範囲):6.5 (1-30) 日 (TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾ ).

《ブレヤンジ®点滴静注神経系事象管理アルゴリズム》

副作用と対策【感染症】

  • 低γグロブリン血症又は無γグロブリン血症や重篤な遷延する血球減少に伴い、 細菌、 真菌、 ウイルス等による重度の感染症や発熱性好中球減少症が現れることがある.
  • 患者の易感染状態に応じた標準的な感染予防療法を実施する.

副作用と対策【低γグロブリン血症】

  • 正常なB細胞にもCD19が発現しているため、 一時的又は持続的にB細胞の枯渇が引き起こされ、 低γグロブリン血症を発症することがある.
  • 定期的に免疫グロブリンを測定し、 必要に応じて免疫補充療法を実施する.

副作用と対策【血球減少・造血器疾患】

  • Liso-cel投与後数週間以上にわたり、 血小板減少、 好中球減少、 貧血等の骨髄抑制が現れることがある.
  • 感染症の合併が見られた場合には血液製剤、 骨髄増殖因子 (G-CSF等) 、 抗菌薬等の投与を実施する.

関連する臨床試験の結果

TRANSFORM試験 (JCAR017-BCM-001試験)¹⁾

概要

  • 無作為化非盲検並行群間比較国際共同第III相試験.
  • Liso-cel群と標準治療 (救援化学免疫療法及び自家造血幹細胞移植併用大量化学療法) 群の有効性及び安全性を比較.
  • 対象:アントラサイクリン系薬剤及びCD20標的薬を含む一時治療後に再発又は難治性の自家造血幹細胞移植適応のアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者. 続発性中枢神経系リンパ腫を有する患者は組み入れ可能.
  • 対象患者:WHO分類 (2016年) に基づくDLBCL非特定型 (de novo又は形質転換低悪性度非ホジキンリンパ腫)、 DLBCLの形態を示すMYC及びBCL2とBCL6の両方か一方の再構成を伴う高悪性度B細胞リンパ腫、 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫 (PMBCL)、 T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、 Grade 3BのFL.
  • 投与量:CAR T細胞 総数100×10⁶個.

結果

  • 追跡期間中央値:6.2ヵ月 (IQR 4.4-11.5).
  • 無イベント生存期間中央値:Liso-cel群 10.1ヵ月 (95%CI 6.1-未達) vs 標準治療群 2.3ヵ月 (95%CI 2.2-4.3)、 (HR 0.35、 95%CI 0.23-0.53、 p<0.001).
  • 完全奏効率:Liso-cel群 66% (95%CI 56-76) vs 標準治療群 39% (95%CI 29-50)、 (p<0.001).
  • 部分奏効率:Liso-cel群 20% vs 標準治療群 9% .
  • 無増悪生存期間中央値:Liso-cel群 14.8ヵ月 (95%CI 6.6-未達) vs 標準治療群 5.7ヵ月 (95%CI 3.9-9.4)、 (HR 0.41、 95%CI 0.25-0.66、 p<0.001).
  • 全生存期間中央値:Liso-cel群 未達 (95%CI 15.8-未達) vs 標準治療群 16.4ヵ月 (95%CI 11.0-未達)、 (HR 0.51、 95%CI 0.26-1.00、 p=0.026).
  • 奏効期間期間:Liso-cel群 未達 (95%CI 6.8-未達) vs 標準治療群 14.5ヵ月 (95%CI 4.7-未達)、 (HR 0.65、 95%CI 0.30-1.43).
  • 6ヵ月時点の奏効維持率:Liso-cel群 71.0% (95%CI 56.1-86.0) vs 標準治療群 65.9% (95%CI 47.2-84.5).
  • 12ヵ月時点の奏効維持率:Liso-cel群 62.1% (95%CI 44.6-79.6) vs 標準治療群 54.7% (95%CI 33.7-75.7).

PILOT試験 (017006試験)²⁾

概要

  • 非盲検非対象海外共同第II相試験.
  • 対象:アントラサイクリン系薬剤及びCD20標的薬を含む一時治療後に再発又は難治性の自家造血幹細胞移植非適応のアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者. 続発性中枢神経系リンパ腫を有する患者は組み入れ可能.
  • 対象患者:WHO分類 (2016年) に基づくDLBCL非特定型 (de novo又は形質転換FL)、 DLBCLの形態を示すMYC及びBCL2とBCL6の両方か一方の再構成を伴う高悪性度B細胞リンパ腫、 T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、 Grade 3BのFL.
  • 投与量:CAR T細胞 総数100×10⁶個.

結果

  • 追跡期間中央値:12.3ヵ月 (IQR 6.1-11.5).
  • 奏効率 (完全奏効+部分奏効):80% (95%CI 68-89、 p<0.0001).
  • 完全奏効率:54% (95%CI 41-67).
  • 部分奏効率:26% (95%CI 16-39).
  • 無増悪生存期間中央値 (追跡期間中央値13.0ヵ月 (IQR 9.5-18.1)):9.03ヵ月 (95%CI 4.17-未達).
  • 無イベント生存期間中央値 (追跡期間中央値16.4ヵ月 (IQR 12.0-18.3)):7.23ヵ月 (95%CI 3.22-22.60).
  • 全生存期間中央値 (追跡期間中央値17.6ヵ月 (IQR 11.2-20.4)):未達 (95%CI 17.28-未達).

参考文献

  1. Lancet. 2022 Jun 18;399(10343):2294-2308.
  2. Lancet Oncol. 2022 Aug;23(8):1066-1077.

最終更新:2023年6月25日
監修医師:HOKUTO編集部医師

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