【第3回】国際学会でありがち!失敗例からの教訓
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11ヶ月前

【第3回】国際学会でありがち!失敗例からの教訓

【第3回】国際学会でありがち!失敗例からの教訓
英語のプレゼンテーションは国内の学会でも一般的になり、 その重要度は増している。 メッセージを効果的に伝えるためにどうしたらいいのか。 近畿大特任教授の光冨徹哉先生に極意を聞いた。 連載3回目のテーマは 「国際学会でありがち!失敗例からの教訓」。

原著発表では 「考察」 を含めない

学会の発表は大きく原著発表、 ディスカッサント、教育講演の3つに分類できます。 原著発表はかなりフォーマットが決まっており、 構成そのものは容易です。 日本の学会では原著発表に考察を含めることが多いですが、 海外学会では結果の発表にとどめ、 考察はディスカッサントに委ねることが一般的です。

シンポジウムや教育講演は、 20〜60分程度と時間が長く、 英語よりもストーリー構成が大切になってきます。 日本語のプレゼンと基本的には同じ考え方でよいと思います。

【第3回】国際学会でありがち!失敗例からの教訓

実力が問われる 「ディスカッサント」

難しいのはディスカッサントです。 日本発の研究でもインパクトの大きい発表は国際学会でなされます。 国内学会でそのような試験のディスカッサントをする機会はあまりないので、 その意味で国際学会でのディスカッサントは未体験ゾーンとなります。

発表を褒めつつも、 鋭く客観的かつ建設的な批評を上品に述べることが求められます。 データの紹介は必要ですが、 サマリーや繰り返しだけにならないよう注意が必要です。

また、 短時間で多くの論文をディスカッションする場合もあります。 ある程度言及の軽重に差があるのは仕方ありませんが、 全てのテーマに言及するように心掛けましょう。

ありがちなディスカッション:発表の繰り返し

ディスカッションでやってしまいがちなのは、 内容を紹介し、 strengthとweaknessだけを指摘するものです。 私も2011年のASCO (米国臨床腫瘍学会) で、 4つの論文のディスカッションがアサインされた際、 発表者のスライドを借りたものを多く使い、 強みと弱みだけ自分で評価する流れを4回繰り返してしまいました。

ほとんどが発表者のプレゼンの繰り返しになり、 結果、 聴衆は退屈してしまったと思われます。 各論文をバラバラに評価してしまったのも反省点です。

【第3回】国際学会でありがち!失敗例からの教訓
緑の吹き出しはスライドの借用など。 発表の繰り返しになってしまうことも

このような落とし穴を避けるためには、 独自の議論や視点を持つことが重要です。 著者が言及しなかった重要な研究データを引用したり、 皆が触れなかった基礎データに言及したりするのが良い対応法であると思います

成功例:独自視点でカテゴリー分け

自画自賛の例としては、 2013年のASCOがあります。 7つの論文を15分でディスカッションするというハードルが高いミッションに挑みました。 これは肺癌の期待されている7つの治療のポスターをまとめて議論するもので、 治療標的やカテゴリーの異なる薬剤を短時間で議論しないといけませんでした。

どうするか悩みましたが、 持続的増殖シグナル、 血管新生といったがんの特質を分類した 「Hallmarks of cancer」 という有名な論文の図を活用し、 7つの論文を3つのカテゴリーに分けるという視点で臨みました。

【第3回】国際学会でありがち!失敗例からの教訓
赤の吹き出しが「Hallmarks of cancer」 を使った独自の考察など

発表者のデータを取り入れつつ、 自然とオリジナルの内容も多くなりました。 基礎的な研究データも示すことで、 より価値のあるディスカッションが実現されたと思います。 多面的な視点や独自の議論を取り入れることが重要ということですね。

笑いをとろう

プレゼンテーションでは笑いを取ることも大切です。 上述のディスカッションには治療薬「Nintedanib」が含まれていたのですが、 マリオの 「Nitendo」 と絡めたジョークを交えました。このようなユーモアが聴衆とのコミュニケーションを促進し、 印象に残るプレゼンテーションにつながります。

まとめ

失敗例から学び自分のスキルを磨くことで、 成功につながります。 以下のポイントに注意するといいでしょう。

  1. 独自の議論や視点を持つこと。
  2. 全てのテーマに言及するように心掛けること。
  3. 基礎的研究の視点もいれて、 できるだけ立体的にいろいろな側面から論文を評価すること
  4. 笑いを取り入れることで、 聴衆とのコミュニケーションを促すこと。
【第3回】国際学会でありがち!失敗例からの教訓

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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